『人間腸詰』夢野久作

人間腸詰、って。。やめましょうやめましょう、想像せずに読みましょう。想像せずに読めば案外スラリと楽しめます。


全8編の短編集。


登場人物も場所も繋がりのないそれぞれ別の話で、下手なたとえをすると、クアラルンプールとサンパウロくらい違う(つまりはどれくらい違うのかがわたしにもわかっていない)けれど、「一冊の本を読んでいる」という感覚が途切れない短編集です。


童話のような素朴さもあれば、ホラー映画のような血なまぐささも、落語のような滑らかな語り口も、ホームコメディーのような陽気さもあるのに、夢野久作の筆にかかると、どれもまるで一幅の掛け軸のようにその存在感は静かに放たれます。


この掛け軸があるから、クアラルンプールだろうとサンパウロだろうと、同じ部屋の中だと思うのでしょう。


タイトルも怖いけど、読み進めてもずっと同じ部屋から出られないの、なんだかそれがいちばん怖かった。