『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』島田荘司


とても楽しい小説でした。

作家・島田荘司の読書家ぶりが伝わってくるような作品でした。


読んだ本の少なさを数えると、わたしが読書家を名乗ることはできませんが、おそらく多くの読書家がそうであるように、わたしもシャーロック・ホームズは好きですし、夏目漱石も敬愛しています。

「物語」に人生を励まされてきた人で、ホームズと漱石を好きじゃない人っているかな、とふと思う、それくらいの人物たちですよね。


とある未亡人が、生き別れた弟と念願の再会を果たします。彼女は弟を自邸へ招き入れて一緒に暮らし始めますが、弟は恐ろしい呪いにかけられていると言って、食事もまともにとりません。そしてある日、まるで本当に呪い殺されたかのように、一夜にしてミイラと化してしまう、というミステリー。

この謎にホームズと漱石が挑みます。おっと、ワトソン君の名前を省いてはいけませんね。


倫敦(ロンドン)のベイカー街が、シャーロック・ホームズへの偏愛と夏目漱石への敬意とで満たされて、終幕までにそれらは船に積み込まれ、気づけば最終行で読者はその船に乗せられています。


きれいにまとまったぁーうひょーい、と読み終えたときに思いましたので、後ろから読む癖のある人はご注意ください。先に読んじゃうと、船に乗せてもらえないかも。