『死の家の記録』ドストエフスキー 訳:工藤精一郎

死の家の記録 (新潮文庫)

死の家の記録 (新潮文庫)

著者が体験した獄中生活の記録。すぐれた作家にはすぐれた観察眼があるものだと思うけれど、その証左のような作品。口を結んで対象をじっと見つめれば、これだけのことが誰にでもわかる、というものではない。
死の家の記録」というタイトルはまさにここが「死の家」であることを言い当てているけれど、同時に「生」があることも含んでいると思うことができます。
読む前は、作品の中でたくさんの人間が死ぬことを想像したけれど、読み終えたあとのわたしは、たくさんの人の生きた姿だけを覚えています。