2007-01-01から1年間の記事一覧

 行きずりの街

郷里で塾講師をしている主人公が、失踪した教え子ゆかりを捜しに上京してくるところから物語は始まります。主人公の波多野は元高校の教師だったのですが、そのとき生徒だった雅子との結婚をスキャンダルに学園を追放され、結婚生活も破綻に追い込まれてしま…

 グリーン・マイル

映画のほうが有名でしょうか。フランク・タラボン監督×スティーブン・キング脚本のトム・ハンクス主演映画『グリーン・マイル』 舞台は1932年、大恐慌下のアメリカ南部、コールド・マウンテン刑務所の死刑囚舎房。そこで看守を務めているポールのところへ、…

 チーム・バチスタの栄光

バチスタ手術とは、拡張型心筋症に対する手術術式の一つで、肥大した心臓を切り取り小さく作り直す、正式名称を「左心室縮小形成術」という。成功率平均60%。手技は難しくリスクは高い。敬遠して手を出さない医療施設も多い中、東城大学医学部付属病院は…

 風に桜の舞う道で

十年ぶりの再会。同じ寮で暮らし、夢や目標を語りあって、酒やタバコの味をおぼえ、くだらない悪ふざけに熱中して、時に一体感を発揮し、そして、それぞれの将来にそれぞれの想いを馳せる。浪人生という時代。同級生でもなく、幼馴染でもなく、親友ともまた…

 きらきらひかる

情緒不安定でアルコール依存症の笑子。ホモで特定の恋人がいる睦月。「脛に傷持つ者同士」のふたりの結婚生活。笑子はちょっとしたことですぐに泣きます。怒って物を投げつけます。手に負えないなぁ、と思います。客観的に見て、相手は何も悪いことはしてい…

 魔術はささやく

「お父さん、逮捕されてるのよ」 タクシーの運転手、浅野大造は人身事故を起こして警察に逮捕されます。相手の女性、菅野洋子は運ばれる救急車の中で「ひどい、ひどい、あんまりだわ」とうわ言のように繰り返し、病院に到着する前に死亡。大造は、自分の進行…

 ヒートアイランド

渋谷のストリート・ギャング「雅」。チームを束ねるのは、野生の牙を隠し持った冷静で隙のないアキと、口達者で金の使い方に堅実なカオル。このふたりが組織した「雅」は、今や渋谷ストリート・ギャングのトップに立っています。さて、物語はこのふたりの配…

 西の魔女が死んだ

「わたしはもう学校へは行かない。あそこはわたしに苦痛を与える場でしかないの」 中学生になってまだひと月も経っていませんでしたが、まいは学校に行くことを考えるだけで、息が詰まりそうになっていました。娘にそう告げられた「おかあさん」は、まいをし…

 サウスポー・キラー

日本一の人気球団「オリオールズ」に入団して二年目の新人投手、沢村。ある日彼は自宅マンションの玄関で見知らぬ男に襲われます。そしてその翌日には、同じくオリオールズのベテラン投手である三浦の百五十勝記念パーティーの会場で、また同じ男が今度は仲…

 サウスバウンド

父親が昔、左翼の活動家で、今でも国家に楯突いていて、あるときは国民年金を払わないがために社会保険庁の人と言い争いになり、またあるときは小学校の修学旅行の費用が不当に高いのは学校と旅行会社が癒着しているせいだと抗議に押しかけ、またあるときは…

 太陽の塔

「諸君。」 さあ、みんな耳をかたむけて。 「先日、元田中でじつに不幸な出来事があった。」 なになに? 「平和なコンビニに白昼堂々クリスマスケーキが押し入り、共にクリスマスケーキを分け合う相手とていない、清く正しく生きる学生たちが心に深い傷を負…

 イニシエーション・ラブ

ルール①結末が気になっても、急いで読み飛ばさないで。 ルール②絶対に最後から二行目を先に読まないで。 と、本の脇に掲げられた手書きの広告コピーは、力強く訴えていました。なので、さっそく最後から二行目を読んでみました。 意味わからん。 というわけ…

 オーデュボンの祈り

自分の人生をリセットしようとしてコンビニ強盗をした(未遂に終わったので、正確には「しようとした」)伊藤は、警察から逃げようとしてある島にたどり着きます。「荻島」という名のその島は、外の世界とはもう百五十年も交流していない隔絶された孤島で、…

 ぼくと、ぼくらの夏

仕事から帰ってきた父親が、新聞を見ながら息子の春一に尋ねます。 シュン、岩沢訓子って女の子、知ってるか うちのクラスだよ。 偶然だな。 岩沢がどうしたのさ。 死んだ。 そこから始まる『ぼくと、ぼくらの夏』。 偶然の重なりなのでしょうが、立て続けに…

 テロリストのパラソル

江戸川乱歩賞と直木賞をW受賞した作品。という売出し文句に導かれて買った本です。事件はなんの前触れもなく、突如として起こります。新宿中央公園での大規模な爆発。その現場付近にたまたま居合わせたアル中のバーテンダー、島村。彼は、自分の指紋がつい…

 スプートニクの恋人

〔スプートニク〕―1957年10月4日、ソヴィエト連邦はカザフ共和国にあるバイコヌール宇宙基地から世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた。直径58センチ、重さ83.6kg、地球を96分12秒で一周した。翌月3日にはライカ犬を乗せたスプートニク2号の打ち上げ…

 八つ墓村

とある村の分限者、田治見家の主人である要蔵は、妻も子どももありながら、ある日突然鶴子という女性にはげしい恋をしました。一方的で無分別で残虐な恋です。彼は鶴子を無理矢理に拉致して、家の土蔵に閉じ込めて、暴力をもって彼女を征服しました。しかも…

 夜のピクニック

北高の毎年恒例行事「歩行祭」。全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通す。 その80キロの間の物語。 甲田貴子は、この歩行祭でひとつの賭けをしようと心に決めていました。異母兄弟の西脇融に話しかけて、返事をしてもらうこと。つまらない賭けだけれど、でも…

 暗いところで待ち合わせ

警察に追われている男が目の見えない女性の家に勝手に上がりこんで隠れ潜んでしまう、というお話です。いつだったか映画化もされたみたいですね。物語は一貫して第三者の視点で描かれますが「男性を見ている人物」と「女性を見ている人物」とが区別されて、…

 果てしなき渇き

元警察官の父親が、覚せい剤を部屋に残して失踪した自分の娘を探す物語。 娘への愛情にあふれたかっこいいお父さんが主人公かと思ったら、なんともまぁ。。。暴力的で、暴力的で、暴力的で、あんまり見たくもないし、いてほしくもないお父さんでした。自分勝…

 神様からひと言

「お客様の声は、神様の一言」 本社一階ロビーに大きく掲げられた「珠川食品」の社訓。この社訓の元で、汗を流し、頭脳を駆使し、忍耐を強いられている社員、佐倉涼平の「ここまでは我慢できるけど、これ以上は無理です」物語。 大手広告会社から「珠川食品…

 フェイク

銀座の高級クラブで働くある若者の、カネに翻弄される話。いや、違うな。銀座の高級クラブで働くある若者が、カネに翻弄されている人たちに翻弄される話、ですね。 主人公の岩崎陽一は、入社一年目の新米ボーイ。安月給な上に長時間労働で、毎日せっせと下働…

 東京湾景

メールの出会い系サイトで知り合った男女の恋愛物語。 と、一言で終わらせてしまおうと思えば終わらせてしまえるのが「恋愛」という名のストーリーですよね。 そうはいってもやはりそこは「恋愛」ですから、いろんな形があるわけで。その形を楽しめるか、興…

 葉桜の季節に君を想うということ

以前歯医者の待合室で読んだ女性週刊誌に、後戯のないセックスはデザートのないディナーようふふ、というようなことが書いてあったが、男から言わせてもらえれば、ふざけるなバカヤローである。射精した直後に乳など揉みたくない。たとえ相手がジェニファー…

 慟哭

よく出来たミステリー、と言える作品のひとつだと思います。物語は、ふたりの主人公の視点で交互に進んでいきます。ひとりは絶望を抱えた無職の男性。ひとりは警察官キャリア組のエリート。エリート警察官の物語は連続幼女誘拐殺人事件を追うものであり、絶…

 三四郎

九州から東京に上京してきた、小川三四郎くんのお話。夏目漱石という人は本当にすごい人だと漱石の作品を読む度に思うのですが、何度読んでもすごいものはすごいと、やっぱり思ったのであります。そして感心するところが多すぎる上に、それらはそれぞれに個…

 オリエント急行の殺人

華麗なる名作。エキゾチックで、レトロで、サスペンスフル。だ、そうです。解説(有栖川有栖)にはそう書いてありました。 オリエント急行の中で殺人事件が起きました。殺されたのはラチェットというアメリカ人。死体には十二ヶ所以上の刺し傷がありました。…

 SMALL STEPS

主人公は高校生の男の子、アームピット。数年前に「グリーン・レイク・キャンプ」という、いわゆる少年矯正施設送りになった彼は、今では真面目に学校に行き、せっせと働いて、小さな一歩を積み重ねる生活を心がけています。彼が「グリーン・レイク・キャン…