2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

 ドイル自薦No.12『ライゲートの大地主』

さて、finalです。『ライゲートの大地主』。わたしの得た情報では2つ目の短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されているということでした。しかし、手元にある新潮文庫のそれには『ライゲートの大地主』が見当たりません。情報に誤りがあったの…

 ドイル自薦No.11『マスグレーヴ家の儀式』

ここまでわたしが読んできたホームズ作品の中で、ホームズがワトスン君と知り合う前に手がけた事件として描かれているのは、これが初めてではないかと思います。ホームズシリーズは基本的にワトスン君が語り手となって事件を記述しているけれども、この作品…

 ドイル自薦No.10『プライオリ学校』

学校へ預けた息子が失踪した事件です。頭の悪い息子を持つと親まで愚行に及ぶということのいい例ですね。親の地位と権力だけを頼りにした2世ほど、社会にとって迷惑なものはありません。一番大切なものを失わずに済んで本当によかったと思います。 現場から…

 ドイル自薦No.8『第二の汚点』

ここにきて長編を4つ、短編を8つ読んだことになりますが、自分がどんどんシャーロック・ホームズを好きになっていくのがわかります。長編よりもむしろ短編の妙に深い感動を覚えます。 『第二の汚点』は短編集としては3番目の『シャーロック・ホームズの帰還』…

 ドイル自薦No.7『オレンジの種五つ』

ここにもでてきました。KKK。キュー(クー)・クラックス・クラン。この団体の名前には個人的にトラウマがあって(原因はポール・オースターの『ミスター・ヴァーティゴ』です)、わたしはこの名前に出会うと、その出会い方の如何にかかわらず、胃のあた…

 ドイル自薦No.6『空家の冒険』

ホームズ君! ほんとにホームズ君かい?(14項) ライヘンバッハの滝へ転落したはずのホームズが帰ってきたお話。なので、間違ってこちらを先に読むようなことがなくてよかったと思うとともに、ホームズシリーズについては最初に読むべき順番というのを掲げ…

 ドイル自薦No.5『ボヘミアの醜聞』

ホームズにとってただひとりの女性、アイリーン・アドラーの登場です。 事件はボヘミア国王の不貞に始まります。五年前に知り合った女、その人がアイリーン・アドラーですが、その女性と煩わしい関係を持ち問題を起こしそうな手紙を与えてしまったので、それを…

 ドイル自薦No.4『最後の事件』

ホームズが滝壺に落ちて死んでしまう(ことになっている)話です。あまりに有名ですし、結末を先に知っていても読書の楽しみは奪われないと思います。奪われたらごめんなさい。宿敵モリアティ教授との最後の戦いです。控えめに言っても、すごくかっこいいで…

 ドイル自薦No.9『悪魔の足』

私刑を認めるか否か、ということについて考えをめぐらす機会は、やはりミステリーを読んでいると必然的に増えるように思います。私刑に対する社会全体の意見は、時代やそのときの社会情勢や犯罪のあり方によっていくらでも変化し得ると思いますが、わたし自…

 ドイル自薦No.3『踊る人形』

もっとも死なせたくない人が死んでしまった。 わたしにとってはそういう短編になりました。 それ以上の感想は、これから読む人のために謹みたいと思います。 またそのこととは別に、ここに出てきた暗号についてはかなり感心させられたことを記録しておきます…

 ドイル自薦No.2『赤髪組合』

わたしとしては『まだらの紐』よりも、こちらのほうがわくわくして読めました。なんといっても奇怪な出来事です。簡単な仕事をするだけで週4ポンド(←けっこうな額らしい)のお給料がもらえるというのですが、その資格はなぜか赤髪を持つ者にだけ与えられる…

 ドイル自薦No.1『まだらの紐』

作者自身が選んだという「シャーロック・ホームズシリーズ短編ベスト12」の1位に挙げている作品がこちら『まだらの紐』。 ある姉妹が暮らす家で起きた不可解な事件。その事件で姉が命を落とし、妹もまた自らの命に危険を感じてホームズのところへ相談にやっ…

 長編ベスト1

これでシャーロック・ホームズシリーズの四つの長編をすべて読むことができました。長編が四つ。他人と比較・議論するのに大いに盛り上がる作品数ですね。 わたしは『恐怖の谷』をベスト1に挙げようと思います。一番おもしろかった。事件の影にモリアティ教…

 ワトスン君、夕やけが美しいね。

ホームズシリーズ長編の3作目。古典というのはやはりすばらしいものです。すばらしいから古典になり得たのだということがよくわかります。100年以上も読み継がれる本には、やはりそれだけの価値があります。普遍性があります。あーすばらしい。 コナン・ドイ…

 『四つの署名』を読んだあとの『緋色の研究』

『緋色の研究』を読んだ感想に、犯人の告白の部分がなくても物語は十分に楽しめるというようなことを書きましたが、『四つの署名』を読んだ今は、あの長い告白部分があってこその「コナン・ドイル」ではないかと思うに至りました。ふたつの作品はその点におい…

 傍線

今はやらないけれど、以前は本を読みながら気になった箇所に傍線を引いていました。「シャーロック・ホームズ」は、わたしの読書生活では初期にあたる時期に読んだ作品なので、今また読み返すといろんなところに傍線が引かれてあることに懐かしさを覚えます…

 分析的推理

個人的にはこの小説の106項〜190項(犯人の独白)はなくてもいいのではないか、とまず思いました。それは「無駄なものがある」という批判的な気持ちからでなく、どちらかというと、ミステリー小説においてもっとも楽しめる部分になり得る「犯人の告白」がな…

 天才と苦痛

「天才とは苦痛を無限にしのぶ能力のあるものだというが、こいつはきわめて拙劣な定義だ。こいつはむしろ探偵に下すべき定義だよ」(50項) 先日読んだばかりの三島由紀夫のことを思い出しました。若くして自殺した三島由紀夫は天才だったけれど、彼が負った…

 3月4日 

さて、これまでわたしはいろんな作家の作品を読んできました(読んだことのある作家の作品はなるべく避けて選んできました)が、そろそろ横に広げていくのではなく縦に進んでみたいと思います。具体的には毎月ごとに誰かの作品だけを読むという試み。 3月は…

 天才である。

「この人は天才である」と言われている人を見ることはそんなに少なくないけれど、「この人は天才だ」とわたしが感じた人はそんなに多くはなくて、でも三島由紀夫は天才なのだろうな、と思いました。夏目漱石がモーツァルトであるなら、三島由紀夫はバッハの…