2010-01-01から1年間の記事一覧

 『霧越邸殺人事件』綾辻行人

2010年最後の読書に選んだ本です。 話は少し違いますが、今年わたしは結婚をしました。結婚をした相手の方が読書家で特にミステリーが大好きなのですが、わたしはミステリーはあまり読みません。ミステリー以外でも読んでいる本のカテゴリーで重なるところが…

 『夜はやさし』F. スコット・フィッツジェラルド 訳:森慎一郎

もうずっと前(何年も前)に買って、そのまま読まずに置いてあった本です。 今年の7月に書いた『グレート・ギャツビー』の感想文で、わたしは次のようなことを言っています。 「美しい日本語だなと思う小説にはこれまでにも(その数は決して多くはないけれど…

 『怖るべき子供たち』ジャン・コクトー 訳:東郷青児

家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第三回課題本。 子供たちの雪合戦の場面から始まります。そこに描かれるのは純白の小さな輝きや、あるいは幼い無垢な心模様ではなく、灰色がかった無邪気であるが故の残忍さように感じます。 わたしはその灰色の残…

 読書が好き

わたしはどちらかというと習慣的に本を読んで暮しています。どちらかというと、暮らしの中に本がある、という生活を送っていると思います。でも読書が好きで好きでしかたない、というタイプの読み手ではありません。さほど熱心な読書家でもありません。どち…

 偶然

君に出会ったのは運命だったね そうじゃないと君は言う たとえ一瞬で恋に落ちたのだとしても 時間をかけて心を奪われていったのだとしても 選んだのは神様じゃなくて 決めたのは星のめぐりじゃなくて まわったのは歯車じゃなくて ドラマチックな偶然が運命に…

 アパート

外階段をカンカンと駆け上がる靴音ピンと張ったふくらはぎ 揺れるスカートの裾肩にかけたバッグの中 きこえる 鍵のついたキーホルダー 白いやかん 小さなコンロ こげ茶色の座布団 僕はあぐらをかいて君の後ろ姿を眺める 長い髪の先が小さく震えて蛇口から流…

 『生ける屍の死』山口雅也

一度死んだ人間が甦って、生きている人間と死んでいる人間が混在する世界。 「死者が甦る」と言われると、わたしは、死者の魂が生者の肉体を借りるというような現象か、あるいは亡霊やゾンビのような見た目が思い浮かぶのですが、この物語はどちらとも違って…

 未来

未来について語ろうと君が言った 月の上を歩きながら 地球で寝ている 君に メールを送ろうタイムマシンに乗って、幼い君のバラ色の頬に キスをしよう休日は自転車でふたり乗りの海中散歩 漂うクラゲでも眺めながら おそろいの歌を口ずさもう そんな未来はな…

 『ヴェニスの商人』シェイクスピア

家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第二回課題本。 ヴェニスの若き商人アントーニオーは、友人バサーニオーの借金の保証人になって、高利貸しのシャイロックから大金を借ります。しかしアントーニオーの全財産はちょうどその頃、海を渡る船の上にあり…

 『はじまりの島』柳広司

地質学者(作品中では博物学者とされています)のチャールズ・ダーウィンを主人公にした作品です。ダーウィンは1831年から1836年にかけて世界一周旅行へと出掛け、後に『種の起源』を発表することになるのですが、その世界旅行の間に実は連続殺人事件に巻き込…

 夏

掬い上げた水を空にかざしてのぞいたら向こうで太陽の光 きらっと輝いて こっちに差し込んだ 夏の花を一輪 手にとって 差し込んだ光に そっとゆらゆら揺れる花 夏の 花 キラキラ 水 揺れる 光 掬い上げた水に夏の花を一房浮かべたら花は揺れずに 凛と咲いて …

 月

真っ暗な道をふたりで歩くとだんだんわたしたちの足元がぼやっと明るくなってきてそれはきっと見上げた空に浮かんだ月明かりのせいなんだ 真っ暗な道を君と歩いているとだんだん君の横顔がくっきりしてそれはきっと見上げた空に浮かんだ月明かりのせいなのか…

 『スカイ・クロラ』森博嗣

とても人気のある作家ですよね。でもわたしは、森博嗣の作品はたぶん好きじゃないです。 ここで言う「好きじゃない」に「たぶん」がついているのは、わたしが普段「好きじゃない」という場合とは、少し違った気持ちが混ざっているからです。 『スカイ・クロ…

 『冷血』トルーマン・カポーティ

家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第一回課題本です。 1959年、アメリカのカンザス州で起きた実際の殺人事件を描いたノンフィクション・ノヴェル。一家四人惨殺事件の経緯を追った作品です。 事件発生から犯人逮捕、死刑執行までの一連の記述は言うに…

 『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

SFだと聞いていたので、宇宙とかジャングルみたいな舞台設定を想像していたら、全然違いました。登場する「道具」や「出来事」はSFでも、それらが起きている舞台はわりと現実的な場所でした。間違った先入観(物語のどこかの時点で宇宙とかジャングルに…

 『ミーナの行進』小川洋子

まゆるんがプレゼントしてくれました。小川洋子『ミーナの行進』。 以前に読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』での読書経験*1から教訓を得て、最後までずっと「だまされるもんか」と思って読んでおりました。いつなんどき、どんな悲劇が待ちかまえているか、わかっ…

 『人格転移の殺人』西澤保彦

タイトル通り、人格が転移するんです。 アメリカのカリフォルニア州にある、小さな(ちんけな)ハンバーガーショップが事件の始まりです。たまたまその店にやってきていた7人の男女(内、ひとりはお店の従業員)。国籍も年齢もバラバラ。彼らが食事をしたり…

 『ちはやふる』1・2巻 末次由紀

ひさしぶりに、わたしの文章を書きます。すでに泣きそうですが、がんばって書きます。 コミックの感想文を書くのは初めてでしょうか。昔は人並みに読んだけれど、今は全然ですね。特に少女漫画はもうまったく読まなくなりました。自分で選んで買った最後の少…

 『Yの悲劇』クイーン

一箇所だけ探すとしたら、ここ。 舞台人として名声の絶頂にあったとき、彼は、おびただしい讃辞と、それと同じ程度の嘲罵を浴びた。「全世界を通じて劇壇の第一人者」といわれるかと思うと、「この驚異に満ちた現代で、なお虫食いのシェイクスピアにとりつい…

 『斜陽』太宰治

僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。僕が小説を書けない振りをしたら、人々は僕を、書けないのだと噂した。僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだ…

 『アラビアの夜の種族』古川日出男

初読が今年の5月だったので、4ヶ月ぶりの再読です。 とても大雑把な分類だけれど、わたしは「とても長い小説」は、あまり得意ではありません。分量だけで言うと、ポール・オースターの『偶然の音楽』くらいが、わたしには丁度いいです。『ムーン・パレス』だ…

 『孤独の発明』ポール・オースター

ノリに乗っているな。というのが、わたしの本作品への見解です。しかしそれは、たとえば『ミスター・ヴァーティゴ』のような物語性に溢れた奇想天外ワンダーランドっ!という種類の「ノリ」ではまったくありません。前に向ってドビューンと進んでいける勢い…

 『罪と罰』ドストエフスキー

ひさしぶりに読みたくなって手にしたのですが、上巻の真ん中あたりで読むのをやめてしまいました。前に読んだときは、主人公ラスコーリニコフ君の悲哀や怒りや破天荒な言動に共感さえし、楽しく読んだような気がするのですが、今回はまったくそうはならなく…

 『シャーロック・ホームズの事件簿』コナン・ドイル

ひさしぶりのコナン・ドイルです。シャーロック・ホームズです。何度も読んでいるけれど、ホームズが登場するのだと思うと、胸の奥が沸々と高揚します。わくわく。 全10作品の短編集。長編も決して嫌いではないけれど、シャーロック・ホームズシリーズという…

 『天冥の標1(下)』小川一水

全10巻だというから全部で10冊だと思っていたら、なんとまあ、1巻はさらに上下巻に分かれていたと、下巻を買うまで気がつきませんでした。最初に1巻の下巻を買っていなかったことは幸運だったと思うべきでしょう。なんてまぬけ。 登場人物の名前や、彼らの特…

 『uubの冒険』

わたしの冒険日記です。いままではずっと『uubの小屋』というタイトルでgooブログを利用していたのですが、先日、この小屋を閉じて、はてなダイアリーにて『uubの冒険』を始めました。 今年の初めの頃、この本棚にこんなことを書きました。 「現実の中で物語…

 『パンドラの匣』太宰治

太宰治という人はとても人気のある作家だけれど、わたしは彼の作品を、あるいは、彼の作品を書いた彼のことを、手放しで敬愛することはどうにもできません。もちろん嫌いだなんて思わないけれど、なんというか「信用ならん」のです。 たとえば彼が今、どうも…

 『東京物語』奥田英朗

今から何年くらい前かな。4、5年前かな。もらったんです、この本。お店に来たお客様に。その頃は今とは別の、新宿にある飲み屋さんで働いていたんですけど、そのお客様は部下の方2人と飲みに来ていて、たまたまそのお席の担当がわたしだったんです。 「東京…

 『ハムレット』シェイクスピア

サマセット・モームの『月と六ペンス』の中に、シェイクスピアの引用がいくつか出てきて、それを見ていたら無性に読みたくなって、買ってきました。シェイクスピア作品は他に2つ、3つ読んだことがあると思うのですが、『ハムレット』は初めて。あらすじも知…

 『犯罪ホロスコープ1―六人の女王の問題―』法月綸太郎

星座を軸にした6編の連作短編集。犯罪ホロスコープ「1」とあって、牡羊座から乙女座までが書かれているから、当然「2」もあるのだと期待しています。なんといってもわたしは「魚座」ですので。 志し半ばで頓挫した「ミステリー年間」で、わたしは自分では…