『にんじん』ジュール・ルナール 訳:高野優

にんじん (新潮文庫)

にんじん (新潮文庫)

にんじん、とあだ名されている男の子の話なのですが、ずいぶん酷い話で、わたしは少年の成長してゆく物語を想像していたから、口があんぐり開いてしまいました。
つまるところ、にんじんは虐待されているのです。ただ、にんじんは「虐待されている」という認識ではなく、「お母さんに嫌われている」というような意識でいるので、嫌われていることに対する不満や怒りはあっても、虐待されていることに対するそれではないのです。だから鈍感なわたしは、「え。これ、いったいどういうはなし?」と、母親のにんじんに対する虐待を、何かの冗談か、物語の伏線かと思ったくらいでした。殴られたりするわけではないけれど、ずいぶん、ひどい。