『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア 訳:福田恆存

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)

舞台では、シーザー亡き後の、ブルータスから続くアントニーの演説の場面が見所でしょうか。たやすく煽動されてしまう市民の姿は、いつの時代のどこの国の民にも示唆を与えてくれるものと思います。
シェイクスピア作品は何を読んでも楽しめますが、本作は政治劇というわかりやすい内容だからか、いくつか読んだシェイクスピア作品の中でも、わたしはかなり好きです。


積まれた本(2)

読み終わった本は、しまわずにいったん机の上に置いておいて、感想文を書いたら棚に戻す。
ことにしているのですが、わたしはいつまで経っても感想文を書かない。だから机の上にどんどん本は積み上げられて、二列になってなお一冊も減らず、もういいかげん机の上をすっきりさせたい衝動に駆られた、まさにこの時に、ずらっとコメントで済ませてしまうことにします。
の2回目。

 『白夜行』東野圭吾

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

旦那さんがおもしろいって言うから読んだのに。最悪です。わたしの時間をかえせー。
こんなに長い話を書いて、そこかしこに思わせぶりな謎を振りまいておいて、解答を「白い影」の一言で片付けようとしてるのがみえみえなのだ。すべての真相を明らかにせよ。
というわけで、さすがのリーダビリティでございましたけれども、知りたかったことは知らされず、明らかにされると思っていたことは、ひとつも提示されずに終わってしまいました。犯人の口がすべてを語るのを楽しみにしてたのにっ!読むんじゃなかったです。あーあ。



積まれた本(2)へ続く。


 『にんじん』ジュール・ルナール 訳:高野優

にんじん (新潮文庫)

にんじん (新潮文庫)

にんじん、とあだ名されている男の子の話なのですが、ずいぶん酷い話で、わたしは少年の成長してゆく物語を想像していたから、口があんぐり開いてしまいました。
つまるところ、にんじんは虐待されているのです。ただ、にんじんは「虐待されている」という認識ではなく、「お母さんに嫌われている」というような意識でいるので、嫌われていることに対する不満や怒りはあっても、虐待されていることに対するそれではないのです。だから鈍感なわたしは、「え。これ、いったいどういうはなし?」と、母親のにんじんに対する虐待を、何かの冗談か、物語の伏線かと思ったくらいでした。殴られたりするわけではないけれど、ずいぶん、ひどい。


 『変身』カフカ 訳:高橋義孝

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

グレーゴル・ザムザが変身する虫は、作中の記述からわたしは巨大なゴキブリを想定したのだけれど、ひとたびそう思ってしまうともうホラー映画より怖くて、心臓が縮む思いで読みました。
ただ、すばらしい小説だということもよくわかりました。


 『ゴリオ爺さん』バルザック 訳:平岡篤頼

ゴリオ爺さん (新潮文庫)

ゴリオ爺さん (新潮文庫)

たいへんに不憫なゴリオ爺さんのお話です。でもそれも、第三者から見れば不憫というだけで、お爺さんにとってはそうじゃない、というところがまた不憫なのですけれど。
夫婦が仲良くするより、親子が仲良くするより、兄弟姉妹の仲が悪くないということのほうが、家族にとっては重要かもしれないと、ぼんやり思いました。


 『八十日間世界一周』ジュール・ヴェルヌ 訳:鈴木啓二

八十日間世界一周 (岩波文庫)

八十日間世界一周 (岩波文庫)

今年の3月に骨折して入院したのですが、入院中に読むのに最適な本でした。主人公が魅力的だし、わくわくできるし、世界を巡れるし、そもそも大金賭けてるからドキドキだし、最後は「地球が味方」で気持ちいいのです。読書好きな入院患者にわたしからの超オススメ。もちろん入院してなくてもオススメですけれどね。