「世の中って、ねえ、人が思うほどいいものでも悪いものでもありませんね」


女の一生』の最後の一文です。「世の中って、ねえ、人が思うほどいいものでも悪いものでもありませんね。」このセリフで370ページの物語が終わるのです。このセリフで!
この一文で物語を終わらせられるというのは、驚異的じゃないかと思います。いや、言い方を変えましょう。「世の中は人が思うほどいいものでも悪いものでもない。」という単純で、しごく一般的な目新しさのない(とも思われる)セリフが、物語の最後の一文として選ばれ、かつ、読者の心に波を立てる、というのは驚異的ではないか、と。この一文を読んだときに生じた自分の心の波の正体を考えると、この一文にたどり着くまでに自分が読んだ370ページ分の文章の力量を感じないわけにはいきません。この何気ない一言が、文章の最後でこんなにも生きてくる。『女の一生』という物語の集約として聞こえるのです。このセリフのために370ページが必要だった、というような存在感がこの一文にはあります。

いやぁ、すばらしい。


ちなみに。

わたしがこの物語で一番驚いたのは、夫の××と夫人の☆☆が、△△伯爵の手によって命を落とすシーンです。ちょっとそれはないんじゃないかというくらい凄まじい。ぜひ、ご一読ください。



ご購入はこちらから↓