金谷六助のセリフ


六助が新子に言います。

今度ぼく、君を家へ遊びに連れて行くよ。そして、ぼくも君の家へ行くんだ……(182項)


なぜ?と尋ねる新子への六助の答えはこうです。

「なぜって、女と男のつき合いは、双方の家庭に根拠を置かないと、不健全なものになり易いからさ。……ぼくの両親など、男女七歳にして席を同じゅうせず、という教えで育てられ、新しい憲法が出た今日でも、感情の上ではやはりそう信じている。そこで息子のぼくが君を遊びに連れて来る。そしてキチンとしたつき合いぶりを見てもらう。すると両親は、なあんだ、こんな事なら何でもないじゃないか、と思うようになる。オヤジだって決して野蛮人じゃないんだし、自分たちが教えこまれて来た事と反対な事でも、それが正しいものだったら、だんだんに理解するようになる。
ぼくは子供として、両親が新しい時代に、少しずつでも目を覚ましてくれることがうれしいんだよ。
また別な考え方をすると、各人が自分の身辺のことで、ぼくがやろうとするような、小さな心遣いを払っていってこそ、新しい時代が築かれていくので、祭壇で民主主義をぶったり、頭に民主主義の知識を詰めこむだけでは、決して世の中のシンが変っていくものではないと思うんだよ」
(182-183項)


六助のように誠実な姿勢で親と接することのできる子供が、世の中にはどれほどいるのだろうかと思います。六助のように自分の行いと世の中の動きとを結びつけて考えられる人間がどれほどいるのだろうかと思います。


おおいに見習いたいです。





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