清潔でさわやかな水を浴びているような気持ち。


殺人事件でもなく、熱い恋愛でもなく、深い啓蒙でもなく、摩訶不思議な夢物語でもなく、ただ「ニセのラブレター」を通して始まった物語。ものすごく小さな世界の、ごく小さな出来事だけれど、ある時代の一部分を見事に切り出している。たった一通のくだらないラブレターにこれだけの人間が関わり、それぞれの考え方や、見かたや、生き方や、人柄が生き生きと映し出されている。


どこにもそよ風は吹いていないのに、どこにも青い海は広がっていないのに、どこにも山の緑は息づいていないのに、生徒や先生や親や町の人が、わいわいがやがややっているだけなのに、この小説には清潔でさわやかな水がどこまでも流れています。



これはわたしにとって「初めての小説」の一つになりました。




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