<伊坂幸太郎月間>『グラスホッパー』

u-book2009-05-24



最初に読んだとき、ああ、おもしろいな。と思ったことを覚えています。だからわたしはまたこれを読むのをとても楽しみにしていました。楽しみにとっておいたのです。ところが二回目の今回、残念ながら同じような楽しさを味わうことはできませんでした。こういうとき、本もわたしも生き物なのだなと思います。


それでも前半は興味深く読んでいました。そうそうこういう話だったよねと、過去の記憶を掘り起こすことも含めて、「鯨」や「蝉」という殺し屋を眺めながら彼らの正当性について考えてみたり、「鈴木」にとっての亡き妻の存在に思いを馳せたり、「押し屋」と呼ばれる男の悲嘆を想像してみたりしながら。


でも、この作品の中でそういうことを楽しむのはもはや無理でした。一度目はどうだったか覚えていないけれど、少なくとも二度目の今回、わたしがこの作品で楽しめるのは、殺し屋の正当性や、死んだ妻への愛情や、社会に背を向けた人物の悲嘆ではなくて、物語の成り行きということに尽きました。後半は特にそうです。「鯨」の結末と「蝉」の対決と「鈴木」の安否。それさえわかれば、殺し屋の正当性なんてあってもなくても、物語を楽しむのにはなんの影響もないように思えました。実際、あまりなかったのではないかと思います。


でも、わたしが小説に求めるのはやっぱり、殺し屋の正当性とか、死んだ奥さんへの愛情とか、社会に対する悲嘆をできるだけ深く考えることなんですよね。




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