<伊坂幸太郎月間>『重力ピエロ』vol.2


「この本は、僕にとってすごく大事な作品で、たぶんずっとそうです。」と作者は言ったようですが、もしわたしが伊坂幸太郎だったら(ここまで読んだ8作品の著者だったら)、同じことを言ったかもしれないと思えます。これを書いてしまったら、大事な作品だと思わずにいるのは難しいような気がします。


「春」


母親が強姦されてできた子供、それが「春」です。「母」は春を妊娠し、それを聞いた「父」は春を産もうと言い、結果、兄の「泉水」は半分だけ血のつながった弟を持ちます。読者であるわたしは当然思います。もし自分が春だったら。もし自分が泉水だったら。もし自分が春の母だったら。もし自分が春の父だったら、と。


「俺たちは最強の家族だ。」(96項)というのは、たぶんこの小説の中でもっともかっこいいセリフのひとつではないかと思うのですが、自分たちが最強であることを証明するために、彼らはいつも戦っています。周囲の冷たい視線や、世の中の悪事や、遺伝子の配列や、苦々しい記憶や、自分たちがここに存在していることの是非と、戦っています。


その戦いのお話です。


心のやわらかい部分を、法律は、絶対に守ってくれない。法律はそんな力を持つことができない。だからわたしたちには自分を理解してくれる、理解しようとしてくれるやさしさが必要なのだと思わずにいられません。



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