『瑠璃の契り』北森鴻

初の出会い。北森鴻。偶然、先日読み終えたところでした。


とても女性的な文章を書く人だなぁ、というのが作家・北森鴻に対するわたしのもっとも強い印象です。男性が読んでどう感じるのか聞いてみたいところですが、また、他の女性が読んでどう感じるのかも機会があれば聞いてみたいですが、わたしは本当に女性的な文章だと思いました。

と思ったのですが、よくよく考えてみたら、違いました。だいいち、わたしは女性的な文章というのは、あまり好きではないのです。この作品に、わたしがいつも「女性的な文章」に感じる不快感はありません。


これは女性的な文章なのではなくて、女性のことがわかっている文章なのだと思います。


女性が主人公なのだから、作品としてそうであるべきなのは作品が目指さなければならないところだとは思うけれど、そうは言っても、男性が女性の、女性が男性の、心の機微や、感じ方を「知る」というのは、実際にはなかなか難しいことではないかと思います。男性の書いた文章を読んでいて、女性の感覚を表現する部分にジャストな共感を覚えることはそんなにないのですが、この作品にはそれがところどころで感じられて、全体を通して違和感もなく、主人公のキャラクターがだんだんと像を結んでいく上手な文章でした。


ちなみに、4つの短編のうちで一番のお気に入りは『倣雛心中』