『東京湾景』吉田修一


だいぶ前に書いた感想文の中でも触れているのですが、吉田修一の『東京湾景』の中で「恋愛の絶頂はいつか」という会話が出てきます。


それを最近になって思い出して、はたして自分は「いつ」が恋愛の絶頂だろうかと考えたときに(かなり真剣に考えました)、たどりついたのは「恋に落ちた瞬間」でした。


経験的にもわたしは時間をかけて人を好きになるということがまずなく、だから、いつのまにか誰かを好きになっていたということもなく、好きになるときは明確に好きになります。もう少し正確に言うと、「あ、わたし、この人のこときっと好きになる」とはっきりそう思います。気持ち悪いかしら。


だからその瞬間というのは、とても決定的なものです。自分がその人に対して向うべき方向性が、その瞬間に決まるのです。すごくワクワクするし、すごくドキドキします。毎日、ルンルンしてます。もちろんそのあとで悲しいこともたくさん起きるのだけれど。


だからわたしの恋愛の絶頂は「恋に落ちた瞬間」と思っていました。いたのですが、自分の感想文をまた読み返してみて、この作品で訊いている絶頂とは、絶頂の種類が違うことに気がつきました。ここでは、

「たとえば、そうねぇ、もうどうにもならないっていうか、せつないっていうか、狂おしいっていうか、そういう気持ちになるときよ」


と、いう絶頂感。



わたしの絶頂感とはだいぶ違います。ちょっと、すぐには思いつかにので、また考え直してみようと思います。