『アラビアの夜の種族』古川日出男


初読が今年の5月だったので、4ヶ月ぶりの再読です。


とても大雑把な分類だけれど、わたしは「とても長い小説」は、あまり得意ではありません。分量だけで言うと、ポール・オースターの『偶然の音楽』くらいが、わたしには丁度いいです。『ムーン・パレス』だとちょっと長くて、『ミスター・ヴァーティゴ』だと、ぎりぎり「長くはない小説」です。最初から最後まで、わたしのトランス状態が、わたしの望む形で維持できるのが、『偶然の音楽』くらいの長さ、と今のところ思っています。


『アラビアの夜の種族』も、だから、途中で飽きました。


1巻はおもしろく読んで、2巻の途中で飽きて、3巻の半分くらいまで立ち直れず、後半からまたおもしろくなりました。初読のときの感想文を読み返したら、「『13』のほうがかっこいいと思った」と書いているのですが、たしかに、『13』のほうがかっこいいと今回も思ったけれど、『アラビアの夜の種族』のほうが、少なくとも2回目は、楽しく読んだかもしれません。


それにしてもよくこんなにたくさんの単語を使ったなぁ、と思います。物語が長いから自然、言葉の数は増えるでしょうけれど、それにしたってものすごい語彙です。こ小説に出てくる漢字熟語が、全部書けて、読めて、意味がわかれば、まあ大抵の読書には困らないだろうなと思えるくらいです。


わたしは一番好きな場面は、もちろん、主人公のひとり「ファラー」が読書を終えて、「本そのものになる」ところです。かぁっこいい。


そしてわたしが一番好きな一文は、作者のあとがきの最後。


繰り返す。紐解いているのは、あなたであり、あなただけがこの本と邂逅している。あらゆる夜を生きよ。

この小説を読み終えたときにこの一文を読むのは、格別でした。