オリエント急行の殺人

オリエント急行の殺人



華麗なる名作。

エキゾチックで、レトロで、サスペンスフル。

だ、そうです。解説(有栖川有栖)にはそう書いてありました。



オリエント急行の中で殺人事件が起きました。殺されたのはラチェットというアメリカ人。死体には十二ヶ所以上の刺し傷がありました。ラチェットは死の前に、私立探偵であるエルキュール・ポアロに「自分の身の安全を守ってくれ」と仕事の依頼をしています。大金を提示されますがエルキュール・ポアロは断りました。

「個人的なことを申し上げて失礼ですが――あなたの顔が気に入らないのですよ、ムシュー・ラチェット」、だそうです。その数時間後に彼は殺されてしまうわけです。

最初に読者に提示されるのは、殺されたラチェットという男が、殺されても同情に値しない人間だということです。彼は、過去にアメリカで起きた幼女誘拐殺人事件の犯人でした。

大金持ちの夫婦の子どもを誘拐して、二十万ドルの金を受け取り、でも子どもはすでに二週間前には殺されていました。第二子を妊娠していた母親はショックのあまり早産し、しかもその子も死児で、おまけに夫人も死亡、夫は絶望のあまりピストルで自殺。子守をしていた娘も、自分が疑われて飛び降り自殺。ところが犯人であるのに間違いのないラチェットは、過去に犯した犯罪でためこんでおいた莫大な金を使い、証拠不十分という名目で釈放。外国旅行を楽しみながらの、悠々たる紳士生活を送る。ちゃんちゃん。

とならずに、ここで殺されてしまうわけです。


そんないわくつきの男を殺した犯人は誰か。というのがこの話です。


エルキュール・ポアロは乗客(十二人)のそれぞれから話を聞き、その証言を整理しながら真相を推理していきます。物語の構成は、事件→ひとりひとりの証言→推理→解決。となっています。彼は推理によって二つの解答を導き出しました。ひとつは、ラチェット自身が恐れていた敵が犯人であり、その敵はすでに列車から降りて逃げてしまっている。ふたつめは、。。


物語が選んだ結末。わたしはあんまり賛成はできなかったけどなぁ。



アガサ・クリスティー著『オリエント急行の殺人』中村能三訳 早川書房