東京湾景
メールの出会い系サイトで知り合った男女の恋愛物語。
と、一言で終わらせてしまおうと思えば終わらせてしまえるのが「恋愛」という名のストーリーですよね。
そうはいってもやはりそこは「恋愛」ですから、いろんな形があるわけで。その形を楽しめるか、興味を持てるか、共感できるかによって、恋愛小説もただの恋愛小説ではなくなる。こともある。
『東京湾景』はわたしに、ある小さな教訓を与えてくれました。
まあ、ささやかで、くだらないかもしれませんが。
「男の人ってさ、どういうときに一番幸せを感じるわけ? きれい事じゃなくて、なんていうか、恋愛の絶頂感っていうのかなぁ」・・・中略・・・「たとえば、そうねぇ、もうどうにもならないっていうか、せつないっていうか、狂おしいっていうか、そういう気持ちになるときよ」
「青山さん」の質問に主人公は答えます。
「そんなの、好きな女とセックスしてるときですよ」
それを聞いた相手は「意外と単純ねぇ。」「それは、絶頂=射精ってことだから、情というよりは生理的なものだ」と。
しかし主人公はそれを否定します。
「違いますよ。」
もちろん相手は納得しません。
「どう違うのよ。」
主人公は言います。
「青山さんは見たことないから、そんな風に言うんですよ」
「わたしが何を見たことないのよ?」
「・・・抱かれてるときの女の顔を、・・・青山さん、見たことないでしょ?」
なるほどね。
自分が抱かれてるときの顔を見せる相手は、やっぱりすっごく好きな人じゃないとだめだね。
もったいない。