果てしなき渇き

u-book2007-08-10



元警察官の父親が、覚せい剤を部屋に残して失踪した自分の娘を探す物語。



娘への愛情にあふれたかっこいいお父さんが主人公かと思ったら、なんともまぁ。。。暴力的で、暴力的で、暴力的で、あんまり見たくもないし、いてほしくもないお父さんでした。自分勝手に怒り狂って暴走してます。読み始めから「ちょっと大丈夫、この人?」と不安になったけれど、まさかその不安が解消されないままに物語が終わってしまうとは。どこかで何かしら同情できる部分がでてきたり、物語の主人公らしい潔さや優しさを見せてくれるのではと期待したのですが、結局、最後までずっとひどい人でした。主人公に限らず全体を通してあんまりまともな人間は出てこないけれど(犯罪者、もしくは、犯罪者みたいなひとたちばかりです)、そのなかでも主人公が一番ひどいのじゃないか、と思えるくらいです。 



失踪した娘は、この暴力的な父親から逃れたくて失踪したのではありません。彼女はすでに、父親の暴力を全身で浴びて、逃れたくても逃れられない場所にまで陥れられていました。ドラッグに手を出す前に、とうに彼女は壊れていました。ずたずたになった心を、もっとずたずたにできる場所へ行こうとしていました。壊れた彼女をさらに破壊できるのは、きっとひとつしかなかったのでしょう。


自分の心のまだ傷ついていない部分を、懸命に守っていたひとかけらを、その暴力で無理やり奪い獲った者への復讐。



ねえ、世の中には、こんなことが本当に起きてる場所があるのかな。




深町秋生著『果てしなき渇き』宝島社>