暗いところで待ち合わせ

u-book2007-08-19



警察に追われている男が目の見えない女性の家に勝手に上がりこんで隠れ潜んでしまう、というお話です。いつだったか映画化もされたみたいですね。

物語は一貫して第三者の視点で描かれますが「男性を見ている人物」と「女性を見ている人物」とが区別されて、ふたりが交互に語ることで物語を構成していきます。

男性は上司だか同僚だか(もう忘れました)を、ホームから突き落として殺した(たしか死んでしまったはず)罪で、警察に追われています。そしてその犯行現場が窓から監視できる家に住む女性の家に隠れ潜むのです。そして、その女性は目が見えないのです。だから住人である女性には、彼のことがわからない。


なんてうまく行くわけがない、という話です。


もちろん女性は男性の存在に気がつきます。誰か、いる。恐ろしかったことでしょう。読者のわたしでさえ自分の部屋の押入れを開けたり、空っぽの台所の戸棚を開けたりして確認したくらいです。よし、誰もいない。ところがこの女性は小説の主人公らしく立派な動きをみせます。男性の存在に気がついていないフリをしながら、それとなく男性が住みやすいような配慮をするのです。

女性が気がつくまでは確かに男性は「隠れ潜んでいた」わけですが、気づかれてしまったらそれはもう「隠れ潜んでいる」とはいいません。


同居です。


ふたりの同居生活、あたたかく見守ってあげてください。




乙一著『暗いところで待ち合わせ』幻冬舎