夜のピクニック

u-book2007-08-27



北高の毎年恒例行事「歩行祭」。全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通す。


その80キロの間の物語。


甲田貴子は、この歩行祭でひとつの賭けをしようと心に決めていました。異母兄弟の西脇融に話しかけて、返事をしてもらうこと。つまらない賭けだけれど、でも貴子は高校三年間ずっと西脇融と話がしたかった。でも、できなかった。なぜなら西脇融が貴子という存在を認めていなかったから。
貴子は西脇融の父親が浮気をした女性との間に生まれた子供です。そしてそのことは、本人たちもわかっています。何の偶然からか、そのふたりが同じ高校の、同じクラスに所属している。


貴子の気持ち、融の気持ち、ふたりを取り巻くクラスメイトたちのそれぞれの想い。


80キロの物語。


伝えられなかった寂しさが、届かなかった優しさが、意地でつくっていた心の殻が、一歩進むごとに、景色が変わるごとに、少しずつ相手へと近づいて行く。躊躇しながら、ぶつかりながら、すこしずつ受け入れられていく。



ねえ。想いはやっぱり伝えないとだめだね。
伝えた想いだけが、もっともっと強くなれる。
わたしはそう思います。




恩田陸著『夜のピクニック』新潮社>