イニシエーション・ラブ

u-book2007-09-29



ルール①結末が気になっても、急いで読み飛ばさないで。
ルール②絶対に最後から二行目を先に読まないで。


と、本の脇に掲げられた手書きの広告コピーは、力強く訴えていました。なので、さっそく最後から二行目を読んでみました。


意味わからん。


というわけで、意味解明のため、最初から読んでみました。


怖いな。わたしはそう思いました。物語はハッピーエンドですが、物語の続きを思うと暗く憂鬱な気分になります。主人公の「たっくん」がかわいそうだなと思います。物語の続いた先のいつかの時点で、彼は幸せの絶頂から突き落とされることになるかもしれないからです。何も知らなければいいのかもしれませんが、彼女のことを信じていた「たっくん」が裏切られるときのことを思うと、わたしは泣けてしまうくらいです。わたしには、彼女の行為はそれくらい酷く感じられます。だけど、恋愛なんてそんなものだし、それくらいは許される範囲内ではないか、いう意見もあれば、そんな女の子はイマドキふつーにいるよ。という声も耳にします。それは実際、現実のある一側面なのだろうとも思います。捉え方次第では「たっくん」のことを、そんな女に騙されてかわいそうに、あはは。と笑い飛ばすこともできるみたいです。もちろん、小説だから、という前提があるからかもしれません。でも、わたしには全然笑えません。彼女はひどいことをしていると思います。ひどい女の子だと思います。


もっとさ、考えたほうがいいよ。反省もしたほうがいい。


文庫本の裏表紙に「甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞瑞しい筆致で描いた青春小説――と思いきや、最後から二行目で、本書は全く違った物語に変貌する。『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー。」という説明が載っています。前半には同意しますが、後半には同意できません。彼女の行為が不愉快なので、二度は読みたくないです。




乾くるみ著『イニシエーション・ラブ文藝春秋