サウスポー・キラー

u-book2007-10-03



日本一の人気球団「オリオールズ」に入団して二年目の新人投手、沢村。ある日彼は自宅マンションの玄関で見知らぬ男に襲われます。そしてその翌日には、同じくオリオールズのベテラン投手である三浦の百五十勝記念パーティーの会場で、また同じ男が今度は仲間を連れて沢村に暴行を振るいます。

そして球団に届いた「告発文書」。

それは「沢村投手を襲ったのは組織暴力団の構成員であり、沢村投手が暴力団と関係を持ち、それがこじれた結果、今回の暴力事件が起きたのである。よってわれわれは沢村投手の野球界からの永久追放を求める。」というものでした。

この告発文書を送ったのは誰なのか。彼を襲った男たちは何者なのか。何が目的なのか。どうして沢村が狙われるのか。。等々。それらを追うミステリー。



さて、それはそれとして。



主人公がプロ野球のピッチャーなので、その特有の生活感や価値観、職業意識を楽しめるところが当然この作品の魅力のひとつとなっています。一例をご紹介。


ボールを投げるという行為は見た目は単純かもしれないが、実際にはスイス時計並みの精密さが必要とされる動きである。約一八メートル先の目標に向けて、体中の筋肉や関節を一つの統一体として動かさなければならない。細かな塵が時計を狂わせてしまうように、ちょっとした体の部位の不調が、体全体のバランスを失わせてしまう。無四球試合を五回もやった記録を持つ、コントロールのいいことで知られた山内という投手が、二回までに七つの四球を出して降板したのを見たことがあるが、原因は足の指の爪を深爪しすぎたということだった。

深爪で、二回までに七つの四球。。。



もし野球選手と知り合う機会が訪れたとしても、わたしは怖くて指一本触れることもできなさそうです。それで仲良くなれるチャンスを逃したらこの本のせいにしてやろうと思います。





水原秀策著『サウスポー・キラー』宝島社>