マルグリットの墓

語り手である主人公は マルグリットの競売で書物を一冊手に入れます。『マノン・レスコー』。どうしてその書物を手に入れようとしたのかという点においては、本人にも理由が定かでないのですが、まあ、その場の成り行きとでもいいましょうか。とにかく彼はマルグリットの遺産を一つ手にします。
その本の第一ページには書き込みがありました。

マノンをマルグリットに贈る。慎み深くあれ。  


そして署名。アルマン・デュヴァル。

このアルマン・デュヴァル氏が、マルグリットとの一連の経緯を語り手に聞かせるところから『椿姫』の物語が始まります。



ところでわたしは、語り手がマルグリットの墓を訪ねるシーンがとても好きです。特に、広い墓地を園丁に案内してもらってマルグリットの墓へとたどり着いたところ。

なるほど、四角な花壇ができていた。名前を彫りつけた白い大理石でそれと分るけれど、もしこれがなければ、これを墓だと思う者はあるまい。
この大理石の墓石はまっすぐに立っていた。鉄柵が、買いとった地面の周囲をめぐっていた。そしてそこの地域は、あたり一面、白椿で埋まっていた。

ものすごくシンプルで大仰な表現も一切ないけれど、咲き誇る白椿がこれほど鮮やかに浮かび上がる。実に巧みです。



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