幼馴染といえば、浅倉南と上杉達也

十五歳半のヴァンカと、十六歳半のフィリップ、ふたりの幼馴染の夏休み。

子供の頃は、ずっと仲の良かった二人なのに、青年になりかけると、次第にしっくりしなくなった。去年早くも二人は、苦い口喧嘩を、陰険ななぐり合いをしたものだった、それがこの頃では絶えず二人の間に沈黙が重苦しくのしかかってくるので、彼らは無理な会話をしようと努めるよりは、むしろふくれっ面をしている方がましだとさえ思うようになっていた。


幼馴染と聞くと、わたしにはどうしても漫画『タッチ』の浅倉南上杉達也が頭に浮かんでしまいます。そしてあのふたりと比べてしまいます。比較対象としての是非はともかく、そうしてしまうのです。そしてヴァンカとフィリップは、あのふたりとはだいぶ様子が違います。当たり前ですが。
でも、だいぶ様子は違うのだけど、それは表現の方法が違うだけで、つきつめて考えばやはり同じところにたどり着くのではないかという気もします。うーん、やっぱり違うか。

『タッチ』は基本的に「さわやかな青春漫画」ということになっているし、そのカテゴライズは、まあ、間違っていないと思うのですが、『青い麦』においては「爽やか」という単語はちょっと思い浮かばない。だいぶ官能的なのです。肉感的と言ったほうがいいでしょうか。十五、六の男女の話だと思うと(その設定にこそ意義があるのだと思うけれど)、恋愛のときめきよりは危うさが先に立って冷や冷やします。



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