オレンジエードのお礼

フィリップは別荘へ来ていた婦人マダム・ダルレーと知り合い、はじめての関係を持ちます。誘惑されて、参ってしまうんですね。あっけなく。「オレンジエードを召し上がっていきなさいな」と家の中へ招かれて、そのときは一杯飲んで逃げるように帰ってくるのですが、ヴァンカに隠したその訪問は彼の傷となって残ります。そしてフィリップの変化をヴァンカは敏感に察知します。

ヴァンカの思いつめた一心は、思いがけない警告によって、フィリップの身辺に一人の女が現れたと嗅ぎつけたものだ。彼が内証で煙草を吸いでも、お菓子のつまみ食いでもしたかのように。彼の周囲の空気を、彼女が嗅ぎわけていることがままあった。<中略> マダム・ダルレーへの三度目と四度目の訪問を、フィルは苦もなくヴァンカに隠すことはできはした。だが、ぞっこん惚れ込んでいる魂が、掲げ、探り、気になる汚点を発見して、さてその上で引っ込めてしまう不可視のアンテナに対しては、距離や土塀が何の力を持ちえよう?……彼ら二人の偉大な恋の秘密の上に接木されたこの小さな寄生木のような秘密が、事実としてはまだ無罪なフィリップを、徳義上の汚れで傷つけていた。妹に対する兄のような恋人として、日頃なら横暴ぶりを発揮して、彼女を奴隷のように扱うような場合に、彼がこの頃では優しくしてくれるのにヴァンカを気づいていた。妻を裏切っている夫がよく見せるあのこまやかな優しさが、彼の心に忍び込んで、かえって彼を疑わしいものにしていたのだ。

大変ですね。。フィリップ君。

数日後、フィリップは、オレンジエードのお礼に(という口実で自分に言い訳をして)マダム・ダルレーに花束を届けに行きます。

そして

いっちゃった。。。ということになります。


今でこそ詩的な表現でも意味のわかる年齢になりましたが、中高生で読んでいたらわからなかっただろうなと思います。


幼馴染のふたりが、ふたりの経験を手に入れるまでのお話です。



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