「正」は誰?

この学校には悪い風習が根付いていると真っ向から立ち向かう島崎先生。校長先生と教頭先生を前にしてもまったく遠慮がありません。ありきたりな言い方をすれば熱血教師ということになるでしょうか。それにしても興味深いのは島崎先生が完全な「正」に見えないところです。ニセ手紙を送られた生徒が傷つき、その出来事を公の問題にして他の生徒全員、あるいは学校全体を敵にしても「それは間違っている」と強く主張できるような先生なら応援したくなってもよさそうなものですが、どうにも疑問が拭いきれない。「島崎先生のやりかたは本当に正しいのかしら。」と自分の正義感と慎重に照らし合わせながら読み進むことになります。この点で前に記述した校医である沼田先生の言葉がよく効いていると感じます。あのセリフがあるおかげで、島崎先生の行動に別の意味が伴ってくる。まあ、どちらにしても島崎先生はちょっと強引なようには思いますが。ふつうなら読者であるわたしも保守的な体制を懸命に守ろうとする学校側に反発心を持ちそうなものですが、ここでは校長先生の言葉についうなずいてしまいました。

「島崎さん、貴女はチトいい過ぎやせんかな? わしはまだ今度の事件に対して何も自分の意見を述べておりはせんのに、貴女はわしを批判し、わしを指図するつもりかの?」

そうね。わたしも島崎さんはチトいい過ぎかと思います。校長先生。





ご購入はこちらから↓