いざ、建築ツアーへ

u-book2009-01-09



天才建築家、十文字和臣(じゅうもんじ・かずおみ)。彼が建てた特異な別荘で起こる殺人事件。

第一印象は「金田一少年の事件簿」に似ている、です。ある限定された場所で、なんらかの関係を持った人間が集められ、そこで事件が起きるという設定と、事件の謎を解くべき役割を最初から担わされているキャラクターがいること、そのキャラクターがどちらかというと「三枚目のダメ男」であること、作中に散りばめられたいくつかのシーンや状況を、探偵役の人間にではなく、読者に向かって提示していること、などなど。たとえば同じ探偵マンガでも「名探偵コナン」は事件のあらゆるシーンをコナンに提示するように描かれていて、読者はコナンの頭の中で推理された結果を楽しむようにできている(とわたしは思う)のですが、「金田一少年の事件簿」は事件の一部始終を探偵の金田一君と同じ目線で追うことで提示し、読者と金田一君(つまりは探偵)を、並べて歩かせるようにできています。要するに、「名探偵コナン」で読者が追うのは「コナン」ですが、「金田一少年の事件簿」で読者が追うのは「事件」というように。そしてこの『館島』は後者と同じく「事件」を追うように描かれていると思います。

読者が事件を追うように描くために最も重要だったのは、事件が起きた場所、すなわち十文字和臣が建てた別荘についての記述ではなかったかとわたしは思うのですが、この作品ではそこがとても上手に描かれています。4階建て正六角形の形をした別荘の入口を入って一階から四階まであがり屋上の展望室まで、まるで自分もその中を歩いているかのように登場人物たちと一緒になって動くことができます。最後まで読んで、この六角形の別荘がフィクションの中の存在であることが不思議に感じられるくらいです。

瀬戸内海に浮かぶ小島。その島にそびえる天才建築家の遺作となった六角形の別荘。みなさまも是非一度立ち寄ってみてください。楽しい建築ツアーが体験できると思います。






ご購入はこちらから↓