大きな蹉跌

u-book2009-01-12


物語のあらすじはこうです。

現実主義者の江藤賢一郎は資本主義社会で幸せを得るためには地位や金がもっとも重要だと考え、自分が社会で勝ち抜くための手段として法律を専攻し、司法試験の合格を目指しています。その江藤はかつて家庭教師をしていたときの教え子である登美子から求愛されており、彼は愛情がないながらも自分の情欲を満たすため登美子と関係を持ちます。

一方で、決して裕福ではない家に生まれた江藤は伯父から学資を援助してもらっており、その伯父は自分の娘(三女の康子)の結婚相手として江藤を考えていました。逆に言えば、自分の娘の夫にしようと考えているからこその資金援助でもありました。そのことをよく理解していた江藤は登美子とはいずれ近いうちに手を切るつもりでいました。

司法試験に無事合格し、その合格をもっていよいよ康子との結婚が決定しようかという段になったとき、江藤は登美子から妊娠したという事実を聞かされます。江藤は堕すように説得しますが登美子は嫌がり、半ば強引にどうにか病院まで連れて行ったときにはもう時期を過ぎてしまっていました。こうなればもう産むしかない、わたしと結婚して、でなければ死んだほうがいい、と登美子は泣きながら嘆願します。

康子との内祝言をあすにひかえた江藤はいよいよ追いつめられ、やはり結婚してほしいと何度も迫る登美子をとうとう殺してしまいます。しかし江藤を襲った悲劇はこれだけでは終わらず。。。




この作品には、いろんな立場におかれた人間の心のあり様が一定の距離を置いたところから観察されている「分析」のような視線があって、その冷静さはちょっと怖いくらいに感じられます。主人公の江藤、江藤の愛人である登美子、経済力のある伯父、その娘康子、息子と登美子の関係を誰よりも案じている江藤の母、金を持ち逃げされ職を無くした登美子の父とその妾、敗残者としての小野、学生運動で捕まった三宅、、、。


もし人生に勝ち負けがあるとしたら、勝者は誰だったのかな。







ご購入はこちらから↓