でも、そのあとで、いろんなことがあって―
あー、なるほどね。というのが読み終えたときの一番素直なわたしの声でした。
無人島に不時着した少年たちの幾日かを描いた小説です。誰に攻撃されて飛行機が落ちたのか、どういう条件のもとでこの子供たちが集められたのか、そういう背景の詳細はほとんどなく、ただ無人島に数人の子供たちがいるという設定だけで物語が動いているように思います。「Xという事件を起こすために、A少年にaをさせよう」というような書き方ではなくて「無人島に少年たちが不時着したらこうなるだろう」という作者のシュミレーションがそのまま文章になっている、という印象をわたしは受けました。そしてそのシュミレーションは、なるほど、と思うものだったのです。違う人間が集まって何かをするのは結局のところそういうことなのだろうと思ったし、人間とは所詮そんなものであると。
最後に隊長であるラーフは言います。
「初めはうまくいってたんです。でも、そのあとで、いろんなことがあって――」
このときのラーフの心情をこれ以上言い当てるセリフはないに違いありません。
<'09.1.16.あゆみBooks早稲田店>
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