あっち行け。


友達のエイヒレさん(『uubの小屋』参照。どこかにエイヒレさんがひそんでいます。)からもらった文庫です。だいぶ前にプレゼントしてもらって、ちょっと読んでみたけれど、あまりしっくりこなくて数ページでやめて、そのまま置いてあった本です。


再び手にしてみました。


おお。今度はしっくりくる。なんでしょうね、この感覚の違いは。
ところで最初の20ページ目くらいにふと「村上春樹」の雰囲気が漂ってきて、あーまただ、と少しがっかりします。それはこの作品に対してのがっかりではなくて、わたしが読書をするときの文章の捉え方に、村上春樹の文章が浸透してしまっているのだと実感することへの嘆きです。なんなんですかね、あの人は。


ここで言うまでもなく、村上春樹を読んで瞬時に彼のファンになってしまったという人は、わたしの知る限りでもかなりの割合で存在しているわけですが、わたしは村上春樹(の作品)が好きかと問われると、「うーん」と唸ってしまう側に属しています。でもその唸りは「好きじゃないけど嫌いだとは言えない」とか「嫌いじゃないけど好きだとも言い難い」というところから発しているわけでもなくて、なんて言ったらいいのかよくわからないのです。思いつく限りでもっとも適当な感情を表そうと思うと「好きかもしれないけど好きだと言いたくない」になってしまいます。実際、作品数はどの作家よりも一番多く読んでいるのです。そして同じ作品を二度、三度と読み返したくなる数少ない作家のひとりでもあります。


彼の作品を読んでいると、その世界を外側からまるごと受け入れたい自分と、この世界を受け入れてしまったら自分が内側からまるごと変えられてしまうのではないかという恐れが葛藤します。それくらい大きな力が彼の作品の中で動いていると感じます。


村上春樹が、別の作家の作品から漂ってくると、ひどく悔しく思われます。せっかく村上春樹ではない人と話をしているのに。もー!あっち行け。という気分です。


池澤夏樹をがんばって読みます。




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