傍線


今はやらないけれど、以前は本を読みながら気になった箇所に傍線を引いていました。「シャーロック・ホームズ」は、わたしの読書生活では初期にあたる時期に読んだ作品なので、今また読み返すといろんなところに傍線が引かれてあることに懐かしさを覚えます。読書の仕方も変わってくるものです。そして、線を引く箇所も変わってくるのだと感じます。


たとえば90項、ホームズがジャン・パウルの言葉の引用として持ち出した

人間の真に偉大なるゆえんの主たる証明は、自己の弱小さを認識しうるところにあるというのだがね。つまり、それ自身すでに貴いものである比較力と認識力のことをいったものだ。(90項)

というところに線が引いてあるけれど、今のわたしならその後に続く

ジャン・パウルは思想の糧をあたえてくれる。(90項)

のほうに、間違いなく二重線を引いただろうと思うのです。


傍線を引いていたときは、「ここが重要である」と後々まで自分に知らせることのためにせっせとペンを取っていたけれど、結局読み返すどころか、見直すことさえないままに数年が経った今、結果としては「ここよりも重要なものがある」と気がつくための傍線になりました。


ぐにゃぐにゃしたみっともない傍線が、やっと役に立ちました。



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