『四つの署名』を読んだあとの『緋色の研究』

u-book2009-03-15



『緋色の研究』を読んだ感想に、犯人の告白の部分がなくても物語は十分に楽しめるというようなことを書きましたが、『四つの署名』を読んだ今は、あの長い告白部分があってこその「コナン・ドイル」ではないかと思うに至りました。ふたつの作品はその点において構造が同じで、物語の後半部分に犯人が犯行に至るまでの動機や経過を、犯人の告白という形でまとめています。どちらも「何もそこまで」と舌を巻いてしまうくらい執念深く、おどろおどろしい告白です。ホームズのしたり顔で進む推理と、その告白部分の物語との空気感に落差を感じずにはいられません。


『緋色の研究』を読んだときには、別の空気感を持った告白部分はなくてもいいと感じました。しかし『四つの署名』を読んで、ドイルの言いたいことは、ここまで含めて言いたいことなのかもしれないなと思ったのです。『緋色の研究』では、ホームズの推理力の発揮のために事件があり、事件発生のためにその事件を導く過程が作られた印象が強かったのですが、『四つの署名』も読むと、たしかに事件はホームズの推理のためにあるけれど、その事件へと至る過程もまた、ドイルが読者に見てもらいたかったことのひとつなのかもしれないと思うことができました。


そしてもうひとつ。青山剛昌の描く『名探偵コナン』は、本当にシャーロック・ホームズに憧れているのだなと思いました。




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