<ドストエフスキー月間>『貧しき人びと』vol.1


さて、今月の終わりが近づいてきました。当初の目標は『カラマーゾフの兄弟』と『罪と罰』を読了することだったのですが、ああ、『罪と罰』は断念。わたしのスピードでは到底無理そうです。あと数日の間に読めそうなものをと思い、家の中を捜索した結果、見つけました。『カラ兄』に比べたらなんという本の薄さでしょうか。『貧しき人びと』。


本の薄さに油断して、少し軽い気持ちで手にしたのが愚かでした。『貧しき人びと』。これもまたなんとすばらしき文学。頭のいい人が書く文章は処女作だろうと遺作だろうと、最初から最後まですべて頭がいい文章なのだと、こんな頭の悪い感想しか出てきません。往復書簡という形をとったこの作品、わたしは冒頭からいっきに引き込まれました。

わたしにとってかけがえのないワルワーラさん!
きのうわたしは幸福でした。とびきり幸福でした。いや、もうこのうえもなく幸福でしたよ!
(5項)


こうして始まるのです。こうまで言われて彼の幸福が伝わってこないわけがありません。貧しい生活をしている彼らの境遇は決して明るいものではないけれど、その中にあって彼らの愛情はいつも思いやりに溢れ、枯れた大地に水を与え続けるような根気強さとやさしさとに包まれています。その愛情には光があります。光が彼らを照らしているのではなく、彼らが世界を照らしています。どうしてこんな文章が書けるのでしょう。不思議でなりません。


ふたりの結末が気になって、ページの最後から読もうとする衝動を抑えるのに必死です。




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