<伊坂幸太郎月間>『ラッシュライフ』vol.1


『オーデュボンの祈り』に続く、デビュー二作目。


わたしはつい最近まで知らなかったのですが「春樹チルドレン」と称される作家がいるのだそうで、伊坂幸太郎はその代表格に見なされているようです。
なるほど、『オーデュボンの祈り』ではわたしは何度も何度も「村上春樹」を感じました。それはもう、うっとうしいくらいに。ここにも、そこにも、あーまたここにもいる、もういいよ村上春樹。と思いながら読んでいました。


伊坂幸太郎が実際に村上春樹の影響を受けているかどうかをわたしは知りません。その文体が似ているのだとしても、それは村上春樹の影響を受けてのことなのか、伊坂幸太郎が独自でたどり着いた結果なのか、作者のことを何も知らないわたしはどちらの可能性も否定できません。ただ、順番は村上春樹が「先」で、伊坂幸太郎が「後」ですから、仮に伊坂幸太郎村上春樹の影響など受けておらず独自にたどり着いた結果だとしても、それはやはり二番煎じなのです。しかたありません。そういうわけでわたしは『オーデュボンの祈り』を読んでいる間中、どこかちぐはぐな印象を拭い去ることができませんでした。物語はオリジナルなのに、それを構成している文体が取ってつけたように感じられるのです。特に言い回しですね。会話文でも、地の文でも、ともかく村上春樹を思い出さずにはおかない言い回しがあちこちに出てくる。うっとうしいったらありません。村上春樹の独特の文体は、村上春樹の物語の中にあるとシンプルな美しさや、あるいは潔さとも言えるものを身につけるのですが、他の人の物語で使われると、わたしにとってはひどく邪魔になるばかりです。


その村上春樹が二作目のこちら『ラッシュライフ』では出てきません。もし伊坂幸太郎村上春樹の影響を少なからず受けているのだとしたら、この作品では脱出に成功していると思います。『オーデュボンの祈り』よりも、ずっと自由な文章に感じられます。もちろん本当のところは作者本人にしかわからないのだけど。



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