<伊坂幸太郎月間>『陽気なギャングが地球を回す』vol.2

u-book2009-05-16



作者があとがきで書いているように「四人の銀行強盗が出てきて、わいわいがやがやと喋りながら、騒動に巻き込まれていく話です。」(378項)


軽快ですね。この作品が一番読ませるのは「会話の掛け合い」じゃないかと思います。ポンポンポンポンとよくもまあみなさん、口も頭も回るものだと思います。ギャングが回しているのは地球ではなくて、口と頭ですね、口と頭。「あーいえばこーゆう」の世界選手権があったら、ぜひとも参加すればいいのではないかと思います。彼らが巻き込まれた騒動はそれなりにシリアスなものだけれど、彼らの「わいわいがやがや」があまりにうるさいために、ほとんどかき消されています。


ところで、わたしはとてもつまらない人間で、銀行強盗という設定だけで冷めてしまっていることに気がつきます。どんなに理知的でも、愛情深くても、仲間想いでも、譲れない信念を持っていても、やっぱり銀行強盗じゃないかと思ってしまうのです。本来なら両手を握りしめてハラハラするようなシーンでも、敵を追いつめて溜飲を下げるようなシーンでも、諸手を挙げて喜べないのです。なんてかっこいいんだ、と胸をときめかせることができないのです。そうはいってもこの人たち銀行強盗だもんな、と思ってしまうのです。彼らはひとりひとりとても魅力的です。でも彼らが銀行強盗であることがその魅力を全部とは言わないまでも、半分以上はわたしから奪ってしまいました。


わたしのつまらない性格はこういうところで大損します。あーもっと楽しめるはずなのに。


ちなみに映画のキャスティングは、
他人の嘘がわかるリーダーの<成瀬>を「大沢たかお」、
でたらめも真実も彼の演説に乗せてしまえばすべてでたらめになる<響野>を「佐藤浩一」、
人懐っこい犬のようにポケットから財布を取っていくスリの達人<久遠>を「松田翔太」、
秒単位の正確な体内時計を持ち抜群のドライビングテクニックを持つ<雪子>を「鈴木京香
が演じているようです。


でもわたしが読んでいる最中に出来たキャスティングは、
リーダー成瀬が「堤真一」、でたらめ響野が「豊川悦司」、スリ名人の久遠が「藤原竜也」、クールな雪子が「小西真奈美」でした。年齢の設定から考えると少し無理がありそうだけれど。


次は、続編の『陽気なギャングの日常と襲撃』を読もう。かなぁ。





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