<夏目漱石月間>『三四郎』vol.6


夏目漱石月間、3冊読む予定ですが、10日が過ぎた今、まだ『三四郎』を読み終わりません。がんばります。



三四郎』の中には、わたしにとって真実として定着してしまった一文があります。一度読んだときに目にしてから、完全に浸透してしまって、ことあるごとに頭の上に浮かんできては何度も繰り返した言葉です。


三四郎が美禰子に借金をしたのを、学友の佐々木与次郎が「返さずにいつまでも借りておけ」と言います。三四郎は「何時までも借りておくのは厭だ」と言いますが、与次郎は「君は厭でも、向うでは喜ぶよ」と言います。
「何故」と訊いた三四郎に対する与次郎の答えがこうです。


「当り前じゃないか。僕にしたって、同じ事だ。僕に金が余っているとするぜ。そうすれば、その金を君から返して貰うよりも、君に貸して置く方が善い心持だ。人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ」(210項)

わたしが人の親切を素直に受け取れなくなっているとしたら、それは与次郎のせいです。





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