<館月間>『ウォリス家の殺人』


館にまつわるミステリーを読もう、月間です。さて、何を読もうかと本屋さんにて探し当てたのがこちら。D・M・ディヴァインという知らない著者の『ウォリス家の殺人』。あらすじに書かれていた「ガーストン館」という館の名前と、「2009本格ミステリ海外ランキング第1位」という帯により決定。


水車館の殺人』で、はやくも現代本格ミステリーは肌に合わないかもしれないという疑惑が浮上していたので、それを払拭するような結果を望んでいたのですが、残念。疑惑はより色濃くなってまいりました。ミステリーとしてどうこうという前に、訳のせいなのかもしれませんが、日本語の文章力の幼さに読む気が削がれてしまうのです。ミステリーなのだから、ミステリーとしてだけどうこう考えれば、もう少し楽しく読めるのかもしれないけれど、体に染みついてしまっているものは仕方ありません。わたしはどんな本を読むときでも、文章であるからには、やっぱり文学としての美しさや、力強さを探してしまいます。でも、なかなか見当たらないんだよね。特に「描写」について、作者の文学的なモチベーションはほとんど期待できなかった。

ジェーンは、自分の登場が感動の嵐を巻き起こすのを、わくわくと待っている。
たしかにあらゆる意味でドラマチックだった。波打つように輝く緑色のドレス。すらりと長い脚、銀色のハイヒール、ダイヤモンドのイヤリング、真珠をつないだネックレス、結い上げられた長い髪、クレオパトラばりのアイメイク。


申し訳ないけれど、あらゆる意味で平凡だとわたしは思うのです。これをドラマチックだと言ってしまうことも含めて。



ちなみに、わざわざ名付けられた「ガーストン館」も、「家」と言えば済むくらいの存在としてしか登場いたしませんでした。館月間なのに。なのに。