<館月間>『斜め屋敷の犯罪』


館を舞台にしたミステリーを読もう月間。やっぱこうでなくちゃね。斜め屋敷は、すてき屋敷でした。
前に読んだ「水車館」と「ガーストン館」は、舞台というほどの役割はなくて、ほとんど背景というくらいにしか活躍しなかったけれど、この斜め屋敷こと「流氷館」は大いなる舞台でした。ミステリーの舞台としては、これ以上ないってくらい、あそび心に富んだ装置だし、事件なんか起きなくても、十分に魅力的な館でした。


むしろね、事件なんか起きず、本当にただのあそび心だけが満ちていたら、どんなにか楽しかっただろうにと思わずにいられません。わたしだったら一日中歩き回って、ぐるぐるぐるぐるするのに。夜中も部屋を抜け出して、2階を通りこしてしまうふしぎ階段に座り込んで、目の前のおっきな真っ白い壁を眺めながら歌を口ずさんだりするのに。塔と母屋をつなぐ跳ね橋を何度も何度も歩いて往復するのに。


と思いながら読んでいました。この館で殺人が起きるなんて、あーもったいない。


この館を装置にしたトリックには酔いしれるものがあるけれど、でもやっぱり、殺人よりさ、鬼ごっことかしたいよね。