『竹馬男の犯罪』井上雅彦

ホラーミステリー」と分類されるジャンルを読むのは、わたしの記憶では初めてです。「ホラー」と言われると、わたしは映画で観た気持ち悪い映像を連想してしまうので、そしてそういう類のものを見たいとは思わないので、小説でも「ホラー」と分類されていたら、読みませんでした。


でも『竹馬男の犯罪』を読んで、ホラーだとは思いませんでした。考えてみたら「ホラー」の定義をわたしは知らないのですが、「映画で観た気持ち悪いやつ」には、個人的には当てはまりませんでした。ただそこに映像がないからかもしれません。映像化したら、「映画で観た気持ち悪いやつ」になるのかもしれません。でも小説である限りにおいて、わたしは気持ち悪くありませんでした。楽しさのほうがずっと大きかった。


よく作ったな、と思います。物語の終盤にさしかかるまでは、わりと平らかな気持ちで、傍観するように読んでいたんです。ああそう。とか、ふーん。というように。いやしかし、侮ってはいけませんでした。磨理邑雅人扮する竹馬男の登場シーンにいたって、わたしのボルテージはぐぐっと上がりました。磨理邑雅人の推理が進行するにつれてぐぐぐーんと上がっていきました。ゴローちゃんの秘密を知るにいたっては、うわっ。とうめき声を発しました。ほんと、よく作ったな、と。


しかししかし、またもなぜかのどんでん返し。最後の最後の黒幕を知るにいたり、わたしの興奮は瞬時にして冷めました。なんだ、あなたなの?と。ミステリーの最後の謎の解答としては、およそ力不足のキャラクターだったのです。わたしにとって。なんだ、あなたが黒幕なら、もう別になんだっていいや。という気分なのです。


あー。おもしろかったのにぃー。ぃー。