『黒猫館の殺人』綾辻行人


綾辻行人館シリーズ3作品目の読書。「黒猫館」というのが言いにくくて(ここにきて白状しますが、わたしはかなりの舌足らずです)、ずっと「ネコネコ館」と呼んでいたせいで、すっかりネコがいっぱいいたような錯覚に陥っています。しかし、よく考えてみたらネコはあんまりいません。


前に読んだ2作品は『十角館の殺人』と『水車館の殺人』ですが、巻(館)を重ねた成果でしょうか、物語の組み立てがぐっと巧くなっているように思いました。ネコネコ館、いや違う。黒猫館の正体が判明するにいたっては、うんうん、ミステリーの雄大さを感じることができました。中村青司あっぱれ。


ただ、これはどうしようない、というか、そうであってしかるべきことなのだけど、作家の持つミステリーへの憧憬を思うと『十角館の殺人』は綾辻行人の大きな作品だったなと感じます。絶対『黒猫館』のほうが上手なのにね。どっちかの本を捨てろと言われたらわたしは『黒猫館』を捨てる気がします。いや、でもやっぱりどっちも惜しいな。『十角館〜』は書きたくて書きたくてたまらなかったんだろうな、っていうのが、『黒猫館』を読んだら、より一層思いました。


この本を読むときは、世界地図を広げてどうぞ。