『占星術殺人事件』島田荘司


『斜め屋敷の犯罪』に続く、島田荘司2作品目。いつか御手洗潔のシリーズを読んでみたいと思っていたのがようやく叶いました。御手洗潔のデビュー作品、有名ですよね。


これはトリックが素晴らしい作品なのですが、あいにくわたくし『金田一少年の事件簿』でそのトリックの焼き増しを先に読んでしまっていたので、死体が6体出てきてバラバラにされていた時点で、謎はすべて解けてしまいました。しかし、途中でトリックがわかってしまっても読んで楽しい作品はありますし、実際わたしはこの作品にはトリック云々よりも別の楽しさを期待していました。なんといってもかの有名な御手洗潔のデビュー作。御手洗潔とはいったいどんな人物なのだろうとわくわくしていたのです。


しかーし、期待は裏切られました。なにこれ。ちょーつまんない。問題はミステリーの進め方でした。40年以上前に起きた未解決事件(つまりは「未解決」という形で決着のついた事件)を、ミステリーマニアの石岡君という人が御手洗潔に講義する形で始まるのです。その事件のあらましを最初っから最後まで事細かに説明し始めて、その途中途中で「さあ、この問題について君はどう思う?」というような調子で続くのです。最初わたしは、石岡君が解答を持っていないから、御手洗君に聞いているのだと思いました。ところが、御手洗君に問いかける謎の答えを石岡君は全部持っているのです。なんだよ!!
と頭にきていたら、御手洗君が見事代弁してくれました。

「こんな嫌な事件は見たことがない!行けども行けども見つけるのは前来た奴の手アカばかりだ。これじゃまるでテストの時間じゃないか! 君が解答の紙を持っていて、マルかバツをつけてやろうと待ちかまえているんだ。僕は誰にもテストされるのは好まない。百人のうちで、ハイ君が一番優秀ですなんて言われてもちっとも嬉しくなんてない。いったい優等生になることがどれほど立派な行為なんだ? 優等生が劣等性にどれだけのことをしてやれる? 僕は、他に優越意識を持つためだけにやる努力なんて、絶対に価値を認めない。今までも、これから先もだ!」


という具合にソファーを蹴って立ち上がるのです。いいぞー御手洗君。もっと言ってやれー。


そういうわけでわたしは、ちょうど上に引用した御手洗君のセリフのある150ページ目くらいまでは楽しく読んだのですが、そこから先は悲惨でした。ちーっともおもしろくない。「手記」が多く、それはどこまで読んでもテスト用紙のようで、そしてわたしもテストなどというものは嫌いで(もっともわたしの場合は優等生になれないがために嫌いなのですが)、イライラ。おまけに御手洗君が現場に居合わせているわけではないから、彼の活躍が見られるわけでもなく、ただ石岡君がなにやらひとり、あさっての方向に考えをめぐらせているだけじゃないか!イライラ。150ページまで読んだら、あとはすっ飛ばして370ページからの解決編で、わたしは十分満足できたのではないかと思います。


しかし、さすがの名探偵。御手洗君はやはり魅力的でした。