『犯罪ホロスコープ1―六人の女王の問題―』法月綸太郎


星座を軸にした6編の連作短編集。犯罪ホロスコープ「1」とあって、牡羊座から乙女座までが書かれているから、当然「2」もあるのだと期待しています。なんといってもわたしは「魚座」ですので。


志し半ばで頓挫した「ミステリー年間」で、わたしは自分では手に取ることのなかったであろう作家の幾人かに触れることができました。そしてその多くのひとはわたしにとって曲者だった(ポジティブな意味でもネガティブな意味でも)のですが、法月綸太郎は読んでいてとてもほっとする作家でした。安心して読めるというのは、わたしにはとても稀有な出来事なので、以来わたしは法月綸太郎という人に心魅かれるものがありました。


それがこの『犯罪ホロスコープ1』の最初の短編、「ギリシャ羊の秘密<牡羊座>」を読むに至って、確固たるものとなりました。わたくし、法月綸太郎さんのファンです。
ミステリーって、プラスの意味でもマイナスの意味でも、節操ないの多くないですか。プラスの意味で節操がないのは、それはもちろん「おもしろい」ということにつながっているからいいんだけど、節操がないということに変わりはないわけで。(マイナスの意味で節操がないのは、論外。)そういう数多くのミステリー作品を思い浮かべると、法月綸太郎の作品は、なんと節度があることか。なんと紳士的であることか。なんと理知的であることか。いくらフィクションでも、いくらミステリーであっても、「あそべること」と「あそべないこと」の境界線があって、それをきっちり守って書いているとわたしには感じられます。そして、その引いた境界線の位置が、たぶんわたしは好きなのです。


わたくし、法月綸太郎さんのファンになりました。