『人格転移の殺人』西澤保彦


タイトル通り、人格が転移するんです。


アメリカのカリフォルニア州にある、小さな(ちんけな)ハンバーガーショップが事件の始まりです。たまたまその店にやってきていた7人の男女(内、ひとりはお店の従業員)。国籍も年齢もバラバラ。彼らが食事をしたり、おしゃべりをしたり、言い争いをしたりしているところへ、地震が起きて、その店の中にたまたまあった、ものすごく奇妙な物体へ彼らは逃げ込みます。店の従業員はその物体をずっと「シェルター」だと思っていたのです。


そこで、「シェルター」に入った全員の人格が入れ替わります。これは「シェルター」ではなく、「セカンド・シティ」と名付けられた人格転移装置。


この話のおもしろいところは、「セカンド・シティ」という名のこの装置が、人格を入れ替えることができるのに、元に戻すことができない、という点です。ひどい欠陥です。愉快でしかたありません。しかも、です。「セカンド・シティ」で同じ入れ替わりを経験したグループ(2人以上であれば何人でも)は、そのグループ内において、死ぬまでずっと、「セカンド・シティ」を介さなくても、入れ替わりが続く宿命を背負わされるのです。さらに、その入れ替わりがいつ起きるのかはまったくの予測不可能というから、愉快、もとい、本当にひどい話です。


そんな運命をいきなり突きつけられた彼らの中で、殺人事件が起こるというミステリー。おもしろそうでしょ?


おもしろかったんです。うふ。


結末だけわたしは、うーん、そうね。っていう感じだったけれど、こんなにきちんと最後まで読者を誘導してくれる小説をひさしぶりに読みました。とても楽しかったです。まる。