『笑わない数学者』森博嗣


家庭内読書会「森博嗣完全読破」企画、第三回課題本。


全11章からなる物語の第2章の途中、何も事件の起こらないうちに(実際には起きているけれど本編の中で明らかにされていないうちに)最初の被害者もトリックもちゃんと見抜きました。あとで探偵役の主人公が解説するように、トリックがわかってしまえば被害者も犯人も必然的に浮かび上がるのです。それしかあり得ないようになっています。

わかってしまっていると余裕があるからなのか、登場人物の言動の細かいところにまで目を配って、自分の謎解きと矛盾がないか、あったらどう修正されるのかを、楽しんで追うことができました。

でもこの作品を、ひとつ前に読んだ『冷たい密室と博士たち』よりも丁寧に読むことができたのは、『冷たい密室と博士たち』で「もうちょっとちゃんと読んで推理すればよかった」と反省したからということもありますが、もうひとつ。「三ツ星館」という作品舞台の存在が大きかったと思います。かなり前に「館月間」と銘打って、ひと月の間、館モノのミステリー作品だけを読んだことがあるのですが、この作品こそ「館月間」にふさわしかったですね。館そのものも魅力的ですし、「館」と「事件」とのつながりがこれほど密接な作品も、そんなにたくさんはないでしょうから。

「三ツ星館」とその敷地内での人の出入りや動きを、いつになく丁寧に追って読んだから、その間ずっとわたし、三ツ星館にいました。楽しかったです。