『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎


朝の読書習慣2015の8

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

とてもひさしぶりに読みました。伊坂幸太郎


伊坂幸太郎の作品は何冊か読んでいて、どの作品もなにかしらいい印象を残してくれています。『重力ピエロ』で感動したり、『ラッシュライフ』で構成の巧さを楽しんだり、『魔王』で宮沢賢治の偉大さを知ったり、『陽気なギャング』でギャングになるのもいいか、と思ってみたり。

でもなぜか、その後に発表された数々の、作家のキャリアを彩る作品があるにも関わらず、わたしはいつまで経っても、デビュー作の『オーデュボンの祈り』が、伊坂幸太郎をいちばん輝かせている作品のように思ってしまうのです。


文章の質や、その他の良し悪しを比較すれば、また別の作品を選ぶのかもしれません。ただ『オーデュボンの祈り』には、伊坂幸太郎の作家としての誠実さが、ひしひしと感じられるのです。切実、と言ってもいいのかもしれません。『オーデュボンの祈り』を読みながら、わたしはただずっと、その誠実さに、胸をトクトクさせられていた覚えがあります。そのことがずっとあとになった今も残っているのです。だから伊坂幸太郎の作品を読むときには、いつもどこかで、『オーデュボンの祈り』の進化を期待しているのです。


でももう、その期待は、今後ずっと叶うことはないだろうな、という気がしていました。そういう気がしたから、伊坂幸太郎を読むこともなくなっていったのだと思います。そしてひさしぶりに、わたしが読むのをやめてしまったあとに発表された『ゴールデンスランバー』を読んだけれど、やはり期待は叶えられませんでした。


登場人物の名前と、生年月日と、ラジコンで首相暗殺、って入力したら、あとはコンピューターが全自動で作ってくれたみたいな小説だと思いました。楽しめるけれど、これじゃトクトクしない。