チーム・バチスタの栄光

u-book2007-11-08



バチスタ手術とは、拡張型心筋症に対する手術術式の一つで、肥大した心臓を切り取り小さく作り直す、正式名称を「左心室縮小形成術」という。成功率平均60%。手技は難しくリスクは高い。敬遠して手を出さない医療施設も多い中、東城大学医学部付属病院は奇跡を起こしていた。バチスタ手術の世界的権威である桐生恭一率いる心臓外科チーム・バチスタ。桐生着任から二十六連勝という数字で華々しい船出をかざり、メディアにも大きく取り上げられていた。そのバチスタ手術が二十七例目から三例立て続けに失敗していた。しかも三例とも術中死。

その原因を探る物語。医療事故か、不運にみまわれただけか、それとも。

チームの内部調査を依頼された田口公平は、同じ病院にあるとはいえ外科とはとんと縁のない「不定愁訴外来」の医師。不定愁訴とは、軽微だが根強く患者に居座り続け、検査しても器質的な原因が見つからない些細な症状全般を指す。タグチの名をとって「愚痴外来」と揶揄されるこの部屋には「相手にしていたらきりがない患者」が送られてくる。田口公平は、そうした患者の話をいつも辛抱強く聞く。

バチスタ手術失敗の原因を探るという物語の大筋からははずれた、田口公平から見た病院や医療機関の現状、そこで働く医師や看護士に対する視線に妙があっておもしろく描かれています。そして、そこから垣間見える患者への理解と人の命を扱っているという誇り。


「人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。
大切なことはそれだけだ。但しそれは、人が思っているよりもずっと難しい技術ではあるのだが。」

田口公平の「愚痴外来」。身体のどこかに不調を感じたら、是非足を運んでみてください。




海堂尊著『チーム・バチスタの栄光』宝島社>