ドイル自薦No.6『空家の冒険』

ホームズ君! ほんとにホームズ君かい?(14項)


ライヘンバッハの滝へ転落したはずのホームズが帰ってきたお話。なので、間違ってこちらを先に読むようなことがなくてよかったと思うとともに、ホームズシリーズについては最初に読むべき順番というのを掲げておいてもらいたいと改めて強く希望。まあ、それも読書の運として楽しめなくはないけれど。


『最後の事件』で味わったワトスン君の悲しみと同様に、『空家の冒険』にみるワトスン君の喜びと感動を思うと、やはり心がぐっと突き動かされます。死んだと思っていたはずのホームズが帰ってきた(三年も経って!)のですから、その喜びはひとしおです。しかもその登場ぶりがまた憎い。その憎いところがホームズその人であるが故の憎さだとワトスン君も読者であるわたしもわかるから、それがまた輪をかけて憎い。いやー、実に嬉しい限りです。


物騒な事情を抱えての帰還でしたが、彼の観察眼や推理、行動力は衰えることなく発揮され、おそらく発表当時も見事な復活を描いた一編になったのだろうと想像します。

ロンドンへ着くと、まずベーカー街の旧居へ自身乗りこんで、おかみさんのハドスン夫人を気絶せんばかりに驚かしてしまった。旧居は兄のマイクロフトの骨折りで、書類などもそっくりそのまま、以前の通りに保存されていた。というわけで、きょうの午後二時には、昔なつかしいあの部屋の坐りなれた肱掛いすに僕は納まったわけだが、親友ワトスン君が昔どおり、おなじみのいすに掛けていないのだけが物足りなかった(21項)


まったく。泣かせるじゃありませんか。



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