『まどろみ消去』森博嗣


家庭内読書会「森博嗣完全読破」企画、第六回課題本です。今回は短編集。


全然違う話ですが、ナインティナインっていうお笑いコンビいるじゃないですか。そのふたりがやってるバラエティ番組で「めちゃイケ」ってあるじゃないですか。17年くらい続いてる人気番組。あの番組、わたし全然おもしろいと思わないんだけど、でも周りにも好きな人は多くて、見てる人も多くて、著名人の中にもファンがすごく多いってわたしが知ってるくらいの人気番組で、でも、やっぱりわたしは、ちっともおもしろくないんです。


その「めちゃイケ」のヨモギダ君って男の子の回で、数年ぶりの再会みたいな企画のときに、スタッフがヨモギダ君に「めちゃイケ」であることを隠してアンケートをとったら、アンケートの「好きなテレビ番組は?」のところに、ヨモギダ君が「めちゃイケ」って書くんです。その回答を見たときの岡村さんの表情が、たぶんそれがわたしにとって番組唯一なんだけど、めちゃめちゃイケてるんです。ああ、この顔が見られるんだったら、この番組があってよかったなって思えるくらい。


まどろみ消去』の解説で、本文中の表現を紹介して「なんておもしろい言い方だろう」って書いているのだけど、わたしはちっともおもしろくなかったし、そうして改めて紹介されても、やっぱりちっともおもしろいと思わない。でも作品解説でその箇所をわざわざ取り上げるのは、その表現がたぶん「おもしろい言い方」だからだと思うんです。実際に笑えるか笑えないかということではなく、作者が「おもしろい言い方として書いている」ということだと思うんです。でもわたしは「おもしろい言い方として書かれた」とも思わなかったんです。


何が言いたいかというと、森博嗣のおもしろさがわからない感じは、人気コンビの人気番組のおもしろさがわからない感じと似てるなあと思ったのです。表現者は「おもしろいもの」として提示しているのだけど、わたしは「ここがおもしろいところなんですよ」って説明してもらわないとわからない。そして、説明してもらっても当然おもしろくない。だから森博嗣もナイナイもべつに全然好きじゃない。でも本作の最後に収録されている一編「キシマ先生の静かな生活」は、上に書いた岡村さんの表情と同じように、「あ、いいな」と思えたのです。こういう作品が書ける人は好きだな、と。


『喜嶋先生の静かな世界』という書き下ろし作品があるそうなので、そこにたどりつくのを「森博嗣完全読破企画」達成の支えにしたいと思います。