2010-01-01から1年間の記事一覧

 『夏と冬の奏鳴曲』麻耶雄嵩

さて、何から書きましょうか。麻耶雄嵩の『夏と冬の奏鳴曲』。しかしこの『夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)』という題名は、めちゃくちゃにいいですね。作中に「春と秋の奏鳴曲」が出てきたときには、胸が高揚しました。物語の内容に沿っているだけでなく、全体の…

 『天冥の標1』小川一水

だいぶ以前からSFを読みたい読みたいと思っていて、でも、何がおもしろいかわからず、ハズレを(わたしにとっての、ということですが)引き当てるのも嫌で、ひとまず手を出さずにいました。古典であれば、おもしろいか否かに関わらず、とりあえず読んでみよ…

 『偶然の音楽』ポール・オースター

再読ですが、まさか「この小説こんなにおもしろかったっけ・・・」と思うとは思ってもみませんでした。ポール・オースターの『偶然の音楽』。もちろん、前に読んだときもおもしろかったのです。好きな作家は?と聞かれたら、わたしはポール・オースターの名前…

 『月と六ペンス』モーム

ポール・オースターの『ムーン・パレス』に、洞窟の中で絵を書くシーンがあるのですが、この作品にも、洞窟でこそありませんが、孤独な中で絵を描くシーンがあります。自分の暮している部屋の壁一面に絵具を塗りつけるのです。『ムーン・パレス』では、絵を描…

 『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド

美しい日本語だなと思う小説にはこれまでにも(その数は決して多くはないけれど)いくつか出会ったけれど、その日本語よりも、あるいはその日本語ではなく、そこにある情景や状況が美しいという小説はちょっと他に思いつきません。 ある場面がそこにあって、…

 クラゲ君月間

やっぱりわたし、自分の好きな本、読みます。 ミステリー年間を始めたのは、わたしの大好きな人がミステリーが大好きで、だからわたしは、その人が好きなものがどういうものか知りたかったのです。そしてあわよくばわたしもミステリーを好きになれたらいいな…

 『鴉』麻耶雄嵩

真剣に物語る、ということを、たぶん麻耶雄嵩は意図的に避けている(嫌っている)のではないかと、まだ2作品しか読んでいませんが、そう思います。真摯な読者は物語を真面目に読み進め、途中で、作者からのあざけりの視線を感じることでしょう。寛大な、ある…

 『ハードボイルド・エッグ』荻原浩

10年前のわたしが読んだら「ちょー笑った。いい話だったよ」と言ったかもしれません。5年前のわたしが読んだら「うん、おもしろいし、よくできてると思う」と言ったかもしれません。3年前だったら「フィリップ・マーロウっ。」と言って喜んでいたかもしれま…

 『御手洗潔のメロディ』島田荘司

御手洗潔の事件簿、わたしにとっての第3弾。一作品目の『斜め屋敷の犯罪』も二作品目の『占星術殺人事件』も、御手洗君の活躍シーンがあまりなかったのでその人となりを楽しむことができなかったのですが、本作品ではそれをとても楽しませてもらいました。そ…

 『田舎の事件』倉阪鬼一郎

作品の紹介文によれば「ギャグミステリ」というジャンルのようです。初めて手にいたしました。全13話の短編集。「しかしまあよく思いつくなぁ」と感心しましたが、感動はありませんでした。 わたしが一番おかしかったのは第9話の「赤魔」。 二番目は「涙の太…

 『女神』三島由紀夫

同じ職場で働いている二つ年下の女の子が、この『女神』を、三島由紀夫の作品の中で一番好きだと言っていました。それだけだったら、読むのはもう少し先になったかもしれないのですが、彼女は続けました。「その作品に出てくる主人公の女の人が、ちょうどuub…

 『盤上の敵』北村薫

紙を広げペンを持って30分くらい机に向かって、あっちやこっちに散らばった意見の断片をまとめようとしてみましたが、うまくいきませんでした。あっちの意見とこっちの意見を結ぶ紐を探しているうちにそれらの意見はどうでもいいことのように思え、ひとつの…

 『ライ麦畑でつかまえて』 J.D.サリンジャー

読み終えたときの幸福感だけが、唯一正確に、この小説へのわたしの感想を語っていると思います。今わたしはすばらしい小説を手にしているという幸福感です。ふわふわした心持ちでした。たとえば先日読んだ村上春樹の『ノルウェイの森』ほど物語に寄り添うこ…

 『ライ麦畑でつかまえて』

やっと落ち着いてゆっくり読めると思っていたのに、今日もおうちに忘れてきました。。。。 言い訳に過ぎないかもしれませんが、カバーをはずすと本の存在感が弱まるみたいです。家を出るときに部屋を見渡しても、見落としてしまうのです。変な落書きが描いて…

 『ライ麦畑でつかまえて』

はてなダイアリーを携帯電話から更新したことはなかったので、今日は初めての試みです。あとでパソコンの画面でどう表示されるのかちょっとドキドキしています。 大切なシフォンちゃん(←お付き合い6年目の携帯電話)を家に忘れてきてしまったので、ようやくお…

 ミステリー年間25冊

今年はミステリーを読むと決めて、100冊の読破を目指しているところではありますが、当初の目標達成にははやくも暗雲がたちこめています。「ミステリーを大好きになる」という目標です。 前にわたしは、自分が小説に求めることは「文章力」だと言いました。…

 『麦の海に沈む果実』恩田陸

恩田陸といえばわたしの中では『夜のピクニック』で、なぜならそれしか読んだことがないにもかかわらず、『夜のピクニック』には恩田陸という作家の持ち味がとても心地よく発揮されていると思えたからです。だから『麦の海に沈む果実』にもその「持ち味」を…

 『ノルウェイの森』村上春樹

ひさしぶりです。村上春樹も『ノルウェイの森』も。 最初に読んだときはたしか22歳くらいで、わたしは大学生でした。村上春樹という作家の作品もこれが初めてでした。そのときどんな感想を持ったかはあまり記憶に残っていません。それもそのはずで今懸命にあ…

 『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

vol.1の感想文にお友達からコメントをもらって、わたしは大事なことを書いていなかったことに気がつきました。 ミイラの身に起きたことを知ったとき、わたしは愕然としました。それから吐き気がしました。なんてひどい小説なのだと思いました。なんてことを…

 『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

やっと週末です。やっとおもいっきり感想文が書けます。『猫を抱いて象と泳ぐ』。本の感想文の前にこの本を紹介してくれたわたしのお友達を紹介します。 まゆるんです。 わたしはアライグマですが、まゆるんはユキウサギです。北海道の寒い大地でたくましく…

 『占星術殺人事件』島田荘司

『斜め屋敷の犯罪』に続く、島田荘司2作品目。いつか御手洗潔のシリーズを読んでみたいと思っていたのがようやく叶いました。御手洗潔のデビュー作品、有名ですよね。 これはトリックが素晴らしい作品なのですが、あいにくわたくし『金田一少年の事件簿』で…

 『アラビアの夜の種族』古川日出男

こちらも『13』に続く古川日出男の2作品目。長かったけれど、そんなに苦痛じゃありませんでした。そうそう、苦痛といえば最近になって気がついたことですが、わたくし、作品の視点(語り手)が変わるのが得意じゃありません。最初っから最後までずーっとひと…

 『迷宮百年の睡魔』森博嗣

またしばらく更新が滞っています。不本意です。もう5月じゃないですか。なんてこったい。一冊でも多く読み、一文でも多く文章を書きたいと思います。 さて、森博嗣です。『すべてがFになる』に次ぐ読書体験2作品目。『F』の感想文を読み返してみたら、身体…

 『黒猫館の殺人』綾辻行人

綾辻行人の館シリーズ3作品目の読書。「黒猫館」というのが言いにくくて(ここにきて白状しますが、わたしはかなりの舌足らずです)、ずっと「ネコネコ館」と呼んでいたせいで、すっかりネコがいっぱいいたような錯覚に陥っています。しかし、よく考えてみた…

 『さよなら妖精』米澤穂信

悪い小説じゃないと思うけれど、あるいは読み終わってから時間が経ってしまったからかもしれないけれど、あるいは途中からヨーロッパ現代史の復習をしている気分になってきたから、あるいは戦争の話が重苦しくてきちんと読むことから逃げたから、あるいは今…

 『MOMENT』本多孝好

『世界の中心で愛を叫ぶ』の片山恭一、『いま、会いにゆきます』の市川拓司、彼らと同種の作品を書く作家なのだという印象があって、手を出す気になれずにいたのですが、先入観は払拭されました。 元来が疑り深いねじ曲がった性根のわたしは、『MOMENT』も「…

 『密閉教室』法月綸太郎

法月作品2作目。1作目は短編集でしたが今度は長編。長編であるということを除いても、1作目とはずいぶん趣が違います。主人公が高校生だからかもしれません。大人の渋さがありません。でも、このリーダビリティはさすがだと思います。何を書いてもやっぱり法…

 『エディプスの恋人』筒井康隆

ふたつ前の感想文にコメントをくれたまゆるんから「小説にもとめること」という言葉をもらって、さて、わたしはなんだろうかと考えて「文章力」だとひとまずの結論を出したのですが、考えれば考えるほど、その回答は事実に即しているように思われます。登場…

 『子どもたちは夜と遊ぶ(上・下)』辻村深月

釈然としません。 誤解を恐れずに言えば、夢中になって読みました。「誤解」と付け加えるのは、おもしろくて夢中になったのではなくて、はやく結末にたどり着きたいがために集中したからです。こういう言い方は「つまらなかった」というようにも聞えるかもし…

 『子どもたちは夜と遊ぶ(上)』辻村深月

まだ途中ですが。 読み始めて100ページ目くらいのところで「どう?」と尋ねられ、ほとんど中傷と思われても仕方ないような罵倒を返してしまい(「うざい」とか「気持ち悪い」と言いました。)、後悔が胸にわだかまっているので、ひとまず、気持の整理を。 女…